2017年01月14日

高村薫「土の記 上」(新潮社)

高村薫さんは本当の小説家だと
心から尊敬します。
かぎかっこ一切排除。
全て地の文のみ。
最近の読みやすい中身の薄い
身辺雑記的な「で?」的な小説に
完全に対峙しています。
伊佐夫は奈良の田舎に入り婿として入り、
シャープの社員として働いた後
土地を守り、米や茶や野菜を育てている。
土のサンプルを集めるなど
土地の人間以上に土地に根付いている。
今70歳を越えて、少しのボケも入りつつも
妻を亡くし、娘はニューヨークに行き、
知り合いが他界する中で
日々農業に従事していきている。

妻、昭代は16年間植物人間状態だった。
交通事故。バイクでトラックに、
自分からぶつかったのでは、と疑問が残る事故。
浮気の疑惑。冷えた夫婦仲とそれ以前の
幸せだった頃の記憶が日常的に交差している。
その家系は女系で、どの女も男関係で
なにがしかの問題をはらんでいるだけに
疑惑は晴れることがない。
娘、陽子は優秀で東大に進み、
子供の彩子をもうけるも、やはり離婚。
陽子は、奈良の土地から離れることで
土地の者や伊佐夫からはよそ者なスタンス。

伊佐夫が、フランクシナトラの
「ニューヨークニューヨーク」をスイングしながら
ニューヨークの街を思い浮かべつつ
土をかまったり、昭代の妄想をしたりする場面は
あまりに秀逸でため息が出ました。

人が1人で生きるその姿に
感じ入りつつぞわぞわしつつ、
読みにくい文もありつつ、
続きが気になって読み進めました。
人生。
生きるための植物たち。
米の生育に合わせ章立てしている文章に
引き込まれました。

下巻、どうなるのでしょうか。
posted by 大ねこ at 20:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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