2017年03月07日

万城目学「悟浄出立」(新潮文庫)

題名からの印象で
いつものおふざけが入って、と
思いきや、大真面目!
万城目さん、すごい実力だと感心。
かつての武田泰淳さんばりじゃないですか。
好きで、良かった。うまい。

中国の名作の一部を自分流に好き勝手に
料理して思い切り想像の翼を広げて
思わず読み手に「わあ!」と言わせるような
仕掛けで、短編ながら読み応えばっちりでした。

悟浄出立
孫悟空の脇で、猪八戒より目立たず
ああ、いたなという存在の彼を
主人公に配したところがまず素晴らしい。
何か悟り、自分も仲間もそこにいることに
気づく瞬間に味わいあり。
趙雲西航
これも関羽,張飛,諸葛亮に比べ
英雄ながら劉邦に愛されていないと
思う彼の迷いがどうにも人間臭くて良かった。
虞姫寂静
項羽に愛された虞は愛されるがままに
アイデンティティを失っていく。
しかし項羽が死を決意し彼女は
生かそうと情けをかけるが
そこで彼女は、自分が単に項羽のかつて愛した
女の身がわりだと知り
反逆をする。
ああ、女が女に戻る瞬間はなかなかに怖い。
でもこれも好きな小説^_^
法家孤憤
史記の刺客列伝中の荊軻の話から。
荊軻と読みの同じ京科の話。
同名だけでなく、運命のいたずらで荊軻の代わりに
官吏となった偶然も重なり
これも自分のアイデンティティとの闘いに陥る
結構重い話。
最後が
父司馬遷
あれですね、中国にあった去勢。
李陵との関係で無実の罪を着せられ
宮刑にあった司馬遷。
娘の父への思いがあって
今も残る史記が世に出たっていう想像。

小説、まさに小説。
今更中島敦読もうかとついつい思いました。
若者に学ばされました。

万城目さん頑張れ。期待しています。
伊坂さんより実は小説としては好きです。
posted by 大ねこ at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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