2017年04月25日

小林信彦「イーストサイド・ワルツ」(新潮文庫)

乾いているのに潤っている。
格好つけているのにちょっとダサい主人公。
うまいな、やっぱり。
内容そのものは恋愛小説。
苦手なストーリーなのに読ませます。

山の手青山に昔ながらの住居を構える
物書きの主人公、深野。
ある狙いがあって近づき、本当に好きになる加奈。
55歳の深野と二十代の加奈。結婚。
ありえないと思っていた妊娠。
子宮内外妊娠という特異な状況で死を得た加奈。
一人に戻った深野は
加奈が短期勤めていた館
(川端康成の「眠れる美女」の世界)にいってみる。
そこにはかつて深野が恋心を抱いた順子が
勤めてもいた。
そこで入れ知恵をされて加奈は深野に近づいた訳だが、
野心や目論見以上に愛が勝った。
しかし彼らの間に横たわる大きな川、
山の手下町の違い、いわんや年齢の差。
深野の身辺を探る年老いた叔母。
己の身を守りたい一心の老女。
さまざまな暗い人間関係や心理状態が
明るいはずの恋愛を薄墨色で彩り
悲劇へと収斂する。
そんな切ないオトナの小説でした。

やっぱり人間描いていない本は読めない。
ここまでかっちり、人間を描いてくださると
ミステリーの味付けも相俟って
苦手な恋愛モノもワクワク読めました。

しかし、幅広い。
小林さんって「東京」を抜け出ない狭い世界観なのに
どれを読んでも面白いっていう。
東京の懐の深さを感じます。
ゴールデンウィークは、深川行ってみたくなります。
東京散歩は退職後の楽しみの一つなんです。

北朝鮮のキナ臭い戦争の足音に
心の奥でかなり怯えながら
今日も無事でよかったと思う1日でした。
posted by 大ねこ at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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