2018年11月22日

中山七里「逃亡刑事」(PHP)

高頭冴子。32歳。
千葉県警捜査一課の警部。
アマゾネスの異名を持つ180センチ越えの偉丈夫。
ピースを吸い、高頭班のリーダー。
正義、をことさらには標榜しないものの、
そのハートは熱く、不正を許さない。
宏池会のいつもの山崎が裏では大活躍。
山崎も誰よりも不正を働くが人情家。

警察自身が「正義」のために
ひとりの不正を憎む刑事を殺した。
それを目撃した8歳の猛。
追う冴子が冤罪の汚名を着せられ、
猛の命を守るために二人は運命共同体となって
逃亡、潜伏、また逃走、確保、となる。
その際に出会う大阪のある地区の
最貧困層の住民たち。権力を嫌う人々。
彼らはこの母子にも似た逃避行の二人を守ってくれる。
そして大団円では、ヤクザが二人の危機を
回避させてくれる。

おそらくこの本の一つのテーマは
正義とは何か、という問いかけ。
また一つは、逃走劇の醍醐味。
さらに大切な一つは、冴子自身の成長物語の側面、
だと思うのです。
正義に突っ走るアマゾネスが
多くの人々の助力の中で
自分は実は非力であったことや
人と人との熱いつながりや信頼を学んだと思う。
それが象徴的に表れる冴子自身の言葉がある。
気丈に逃亡しあった猛にいう言葉。
「人にはいくつもの顔があって、いくつもの
言葉を持っている。その都度その都度変わっていく。
……人はそんなに単純なものじゃない。
単純でないものを単純に分類すると、
取り返しのつかない間違いを犯す。
お前は絶対そんなことをするな。」

別れる時に猛は10年後を待てと言って
冴子を心から驚かせ、そして感動させる。

暴力を受けても冴子の意志を守る高頭班の郡山、
母を感じながら正しさを信じてついてきた猛、
強引さにうんざりしつつも人に惚れた山崎、
人を見抜く力を身に付けた佐古ジイやセンセイ、
みんな、実は、冴子という真実を守り抜く
女に惚れたからこそ協働してくれた。
私はこの本を貫く硬い骨組みに
強く共感して胸を熱くして読みきったのでした。

冴子も成長し、猛も成長して、
嫌われようが構うかという気持ちで
自分の真実を守りたいものだ、と思いました。

ところが、残念ながら私には
その真実が今行方不明になっていて
とりあえず現場から
逃亡教師になろうとしております。

ああ、なさけないったら。
posted by 大ねこ at 22:06| Comment(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]