2018年01月13日

井上ひさし「一分ノ一 中」(講談社文庫)

仕事始まり、その疾風怒濤の忙しさに
笑えるほどです。
親分曰く、プレミアムフライデーは無理でも
週に一回は早く退勤しましょうよと
呼びかけてくれるのですが、無理。
その当人の親分が次々と仕事回してきます。
現場ってどこもそんなもん。
帰りの電車の混むピークを見ると
ご同輩だらけですからね。

さて本の話。
荒唐無稽が止まりません。
サブーシャさんが一人になってしまい
東京の文書配達人という仕事を得て
偽の身分証明書を数枚所持し
使い分けていたところが
そのいちいちがいわくつきの人物だらけ。
殺人者、中国料理店の皿洗いプロ、
俳優、本書表題「一分ノ一」を書いている作家、
おかげで追っ掛けられてはギリギリで助かる
事件だらけ。
しっちゃかめっちゃかでありながら
筋に乱れを見せないあたりはさすが。
本書のラストは、文書を配達に行った先が
ディズニーランドならぬ霊園ランドで
バーチャル体験するところで続く、です。
そのバーチャル体験がなぜか忠臣蔵って。
井上さんの好きな世界があちこちに
散りばめられているあたりは笑える。

結構晩年に近い作品だと思いますが、
デビュー当時の「ブンとフン」にに近い匂い。
思えば「ひょっこりひょうたん島」が井上さんとの出会い。
そのあとはそれと知らずに「ブンとフン」を読み
笑い転げた高校生の頃。
劇作家と知ったのはずいぶん後。
その後、宮沢賢治との繋がりや
憲法問題コメ問題などの意見に強く共感。
心の師の一人ですね。

さて、そんな師匠がこの冒険活劇に
どんなオトシマエをつけるのか
最後まで楽しみたいと思います。
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2018年01月05日

井上ひさし「一分ノ一 上」(講談社文庫)

ちょーっと読むのに時間かかりました。
まだ中、下とあるのが正直ウンザリ。
時は19✖️✖️年。
日本が米、英、中、ソ連に分割統治された設定。
東北はソ連の統治下。
三郎ことサブーシャ地理学者。
東京のセクシー歌手や関西の兄いや
旅館の息子たちとのニッポン奪還冒険小説。

何しろ入口がロシア文学然としていて
そこがまず難読。
やっとそこを超えたら面白くなってきましたけど
ヘリコプターに忠犬に爆弾に
あまりに荒唐無稽。
その上井上さん独特の畳み掛けがてんこ盛り。
こっちも真面目くさって読むのをやめたところ
やっとスムーズに読み終えることができました。

井上さん独自の難しいことをやさしくして
笑い飛ばせる仕組みになっています。
ただ、思いのほか荒唐無稽が過ぎていて
戸惑っています。
とりあえず中巻にいってみます。

多分男性雑誌か何かの連載ですね。
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2017年12月23日

かこさとし「未来のだるまちゃんへ」(文春文庫)

かこさとしさんは、御年91歳。
敗戦を19歳で迎えた生きる歴史です。
やんちゃでよく考え自意識の高い
お子さんだった。目が悪いため兵役免除、
東大工学部に入り企業の研究所勤務しつつの
絵本作家。
作家になる前にセツルメントという
ボランティア組織に属して
子供達に紙芝居や幻燈を見せていた。
作家になってからでも会社勤めをしつつの
二足の草鞋を履く生活。
唯一の彼の汚点は、家族を顧みなかったこと。
自分のお子さんとはほとんど遊ばず
他人のお子さんから多くを学んだとのこと。

でも名作「どろぼうがっこう」「からすのパンやさん」は
実のお子さんにも好評だったらしいです。

我が子の小ねこも「だるまちゃん」シリーズ大好きで
何度読まされたか分かりません。
当時全シリーズ持っていたと思います。
だるまちゃんのお人形もいまだにあります。
「いやいやえん」のしげるもそうですが、
このだるまちゃんもなかなかにワガママで
実に子供らしい。
私自身は、「だむのおじさんたち」が最初の
かこさとし体験だったと思います。

ー「子どもは未発達だ」と決めつけている
教育者たちは、子どもたちが遊びの中で
ごく自然に発揮しているこういう生物の能力を
見逃しているんじゃないか。
ー「君が持っている、ものすごい鉱脈はそれだよ」
そう気づかせてやることさえ出来れば、
子どもは、大人が叱咤激励なんかしなくたって、
自分からぐんぐん成長していけるのだと、
僕は川崎の子どもたちを目の当たりにして得た
経験から、そう確信するようになりました。
ーしまったと思ったら、次は考えろ。
自分でよく考えて、自分をちょっとずつ
変えていけばいい。そうして、失敗を
乗り越えてゆけるのが人間で、
君もその一員なんだよ。
ー子ども相手だからこそ、むしろ小手先の技や
ごまかしは通用しない。
人間対人間の勝負。

最後の二つは、私自身も日常的に
肝に銘じて仕事しています。

かこさとしさんはいまだに戦争についての絵本が
描けないとおっしゃる。
それは情緒としての絵本は描きたくないという
気持ちの表れなんだと思います。
原子力にも仕事で携わり、経済効果や
安全性等に始まり、政治力学やる世界的展望を
よく知る科学者だからこそ
実は誰よりも戦争反対でありながら、
個の力では描き切れないジレンマがあると
推察するのです。
でも、ここは命尽きる前に妥協作でも
よいので、出版していただきたいと
教育現場からは熱望しています。

どうぞさらに長生きしていただき、
優しくも厳しい眼差しで
我々のともしびでいてください。

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2017年12月19日

浅田次郎「日本の「運命」について語ろう」(幻冬舎文庫)

あとがきを読んでびっくりしたのは
この本が語り下ろしではなく
様々な場所で行った講演会の記録を
起こしてまとめたものだということ。
それはすごい。
よくまとまっていますし、
浅田さんが一貫して主張をもっていて
不変な態度で語られることが伝わります。

いくつか引用します。

ー高校で日本史と選択科目です。
自国の歴史を教えないのは恐ろしいことです。
今、自分が生活しているこの社会の
座標がわからないという意味ですから。
ー戦争について書き残すことが、
苦労した父母の世代、祖父母の世代への
礼儀です。若い世代、これから生まれてくる
世代への責任でもあります。
ー方言が失われると、その土地の気性が
失われるんです。言葉は風土の保存装置なのです。
ー歴史を知るのは、自分たちの立ち位置を知るためで
あって、正当性を声高に言いつのるためではない。
ー中国の科挙を突破した中国歴代王朝の政治家、
官僚は全員が詩人です。文治国家としての
中国の面目躍如であります。すごい国だと
思いませんか?政治家が全員詩人って。
ー農耕民族にとっては強大なリーダーシップだとか
ずば抜けた能力などはあまり必要ない。
農耕民族にとっては、長男相続がいちばん
適しているようです。
ーキリシタン弾圧に対して「ひどい話だ」
「残酷だ」などという価値観で教わっていますが、
これは安全な保障上の国策でもありました。
ー日米和親条約を結ぶことでアメリカは
日本外交上の最恵国となったわけです。

みんなの知らない世界、というあたりでしょうか。
まだまだご健在、新作も出ました。
8歳上の先輩についていきます。
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2017年12月11日

細野晴臣「HOSONO百景」(河出文庫)

久しぶりに細野晴臣さんの曲
ウオークマンにてじっくり拝聴。
低音とアンビエント、ごった煮ガンボが
改めてなるほどーと納得。

東京は白金、実家はお金持ちだと推察、
音楽的にも恵まれた環境とも推察。
50年代の音楽をあの世のものと言い、
今は40年代の音楽にハマっているという。
はっぴいえんどからキャラメルママ、
狭山でのHOSONOハウスでの宅録。
横尾忠則さんなどとの交流やインド体験を経ての
YMO、隠遁しつつの各国体験、
各国の音楽の吸収、
しかし教授のクラシックではなく
ユキヒロのテクノではなく
あくまでポップミュージックに元がある。
この辺、レパートリーや手法は大きく違えど
桑田さんに酷似。
だから私は細野派なのだ。
俳人金子兜太言うところの「定住漂泊」があうと
解説のいとうせいこうは言う。
納得。
細野さんが紹介するアーティストやレコードの
三分の一くらいしか私は知らない。
けれどその姿勢と彼の曲間違いなく好きです。
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2017年12月02日

伊坂幸太郎「ホワイトラビット」(新潮社)

12月に入りましたね。
今日は学校の子供達のお祭り。
教師側リーダーとして全クラス周りました。
どのクラスもよく考えてできていました。
学校のチーム力に感謝です。

伊坂幸太郎作品は中山七里作品同様、
薀蓄の宝庫。
ここで出てくる「ラ・ミゼラブル」やオリオン座の
話はなかなか深かった。
白兎といえば因幡でしょうし、いつもの黒澤主人公も
私的には満足です。
立てこもり事件を中心に
どんでん返しの連続。
読み手を気持ちよく翻弄してくれます。

人の人生は
はい生まれました。はい死にました。ではなく、
はい生まれました。はいいろいろありました。
はい死にました。だということです。

黒澤自身もいろいろ。
犯人を追う夏之目もいろいろ。
(家族を事故で失い、その原因である占師殺害の過去)
立てこもりした兎田もいろいろ。
(悪者稲葉!に最愛の綿子ちゃん拉致られ九死に一生)
兎は綿に癒されましたものね。
立てこもられた不幸な親子もいろいろ。
(亭主はサド、人生やり直したい系。
稲葉が追う折尾を誤って殺しちゃった!)
そんなこんなが交錯して立てこもりを演出しないと
解決できない状況があってこの小説は
成り立っています。
一概に悪とは何か、断じ切れない人の物語が
ありました。

まあ、だから何だっていう話ではありました。
でも、作者の温かい視線が
この小説を面白くさせています。
ハードカバーでも買いたい作者です。
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2017年11月27日

中山七里「静ばあちゃんにおまかせ」(文春文庫)

題名の軽さから高を括っていました。
なんの、さすが中山七里さん。
本格派。
しかもやはり成長小説。

葛城刑事と高遠寺円。
その円の祖母が元裁判官の静。
葛城の支援を惜しまず円は
おばあちゃんから知恵を借りて
葛城を助けていく。
円自身ものちに司法の路に進むべくの大学生。
一番最後の話でおばあちゃんは幽霊という
不思議な終わり方は不可解ですが
それ以外は薀蓄に富むおばあちゃんの言に
円ならずとも読者も居住まいを正します。

連作集でどの話も手抜きなし。
一つ一つが珠玉。
さらに葛城と円の恋愛物語でもありニヤニヤします。

おばあちゃんの言の一部抜粋。
ー物心つく頃からその人なりの行動規範というものは
自然にあってね、その自分の規範と世間の良識を
擦り合わせていく作業を成長というの。
ー仕事の価値はね、組織の大きさや収入の
多寡じゃなくて、自分以外の人をどれだけ
幸せにできるかで決まるのよ。

ジーンとします。
円お葛城も可愛いですよ。
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2017年11月18日

中山七里「いつまでもショパン」(宝島文庫)

ピアノについて何も知らない。
クラシックについても大して知らない。
もちろん、ショパン国際ピアノコンクールなんて
もっと知らない。
困ったもんだ。
アルカイダや、かつてのイスラム国のことなら
少しわかる。
岬洋介さんなら結構知ってる。
そのレベルで楽しく読み切りました。
つまり、レベルの高い小説っていうことです。

ショパン国際ピアノコンクールでの
テロリスト事件。
結局は国際組織とは無関係な
私怨による事件だったけど
途中までは国際事件かと
ドキドキしました。
そこは正直なーんだだった。
けれど主人公ヤンの成長記録としては
素晴らしいものがあります。
中山さんってミステリーの形や
ピアノの薀蓄を通して
実は若者の成長小説を書きたい人だと
認識致しました。
だから素人にも読めるのかな。
ピアノコンクールの壮絶さや
ある方を彷彿させる視力障害の
若者のピアノの美しさなど
いずれピアノ曲を聴いてみようと
思わせる技術は、単に薀蓄の深さではない、
書き手の想いがこちらを動かすのです。
岬や視力障害の榊場の音楽に
ヤンが動揺し嫉妬し、それによって
自己克服したように。

一気に読み切りました。
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2017年11月13日

中山七里「どこかでベートーヴェン」(宝島文庫)

夏以来の久々中山七里作品、
ドビュッシーと同じ音楽シリーズ。
岬の高校生時代の初めて?の推理は、
自分が冤罪に巻き込まれそうになっての
同級生殺人事件。
舞台は岐阜の美濃加茂地方。
モリカケ事件に似てる建築屋と行政の癒着が
メイン、その娘息子が起こす事件。
学校が土砂崩れで孤立。
そんな場所に建てるかっていう場所。
サイドストーリーとしては岬の突発性難聴。
そして岬の親父さんとの確執。

全体としては青春小説です。
担任の棚橋先生の真っ当な説話や
岬の天才を羨む周囲の学生達。
それらを俯瞰して描き、岬の親友として登場する
鷹村が中山七里さんの分身として登場。
わかりやすい青春群像で、
高校生なら読んでほしい一作になっています。

クラシックも聞いてみたくなりますね。
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2017年11月09日

岩波明「発達障害」(文春新書)

クラスに今や必ずいるであろう
発達障害の子。
けれども親御さんにそのことを
どのように伝えたら良いか悩むのも事実です。
我々学校側も、医師ではないので
ハッキリした確証は持てない。
ただ経験上、そして数多くの子供を見て来た体験上、
多分そうだろうという印象なので
でも多分当たっているだろう、から
伝えたい。しかし親御さんにしたら
最後通告のように聞こえてしまう、
堂々巡りで言いそびれるパターンが多いです。
その結果、学年が進むごとに
症状がハッキリ見えてくる。
その頃になると「前の学年の先生には言われてない」と
親御さんは思う訳で余計に言いづらい。
なので、親御さんの方から相談をされる時の方が
ハッキリいいやすくなるので
よければ世の保護者は発達障害を疑う時は
直接担任に言ったら動きが速いと思います。

この本では主にADHDとASD(自閉)についてです。
常同性とこだわり、そして他者との関わりに
前者は関わってうまくいかない、後者は
関わりに興味ない、そのあたりつかんでおくと
理解が早いようです。
今のクラスで軽いADHDを疑える子がいます。
もう一つLD(学習障害)を感じる子が2人。
あとは学力不振が2人。
全て男子です。
前年には完全なASDがいました。
つまりクラス30人として発達障害らしい子は
3人はいるということです。10パーセントですね。
教師の中にも当然存在する。
たまにいますね、変わった方。

大切なことは障害なので治療が必要で
治療を通して改善されるということですね。
本人も保護者も楽になるはずです。
なのに切り出しにくい日本の事情は
変える余地があります。
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2017年11月04日

三浦しをん「まほろ駅前狂想曲」(文春文庫)

ああ、終わっちゃった。
多田も行天も亜沙子さんもハイシーとルルも
ヤクザの星さんも手下どもも、岡さんも
由良坊もみんな好き。
凪子さんとはるちゃんも可愛い。
たくさんの人物が織りなす人情劇。

行天の娘のはるちゃんを預かることがメイン軸。
怪しい野菜売り団体が行天の母親が入信してた
宗教団体の残党によるもので
そこと星達の絡みがサイドストーリー。
なおかつ、岡さん達のバスジャック事件と
多田と亜沙子のラブストーリーが入る
長編仕立てになっています。

全ての物語がひと段落した後に
行天が失踪し、多田の落胆が身に沁みます。
もちろんなんじゃそりゃ、というノリで
帰って来ての大団円です。

まほろ市という架空の街ですが
今日、例えば麻布十番の町を歩き
「港区のハイソに街だしね〜〜」という
嫉妬めいた思いは
歩いてみて完全払拭されました。
いい街です。
庶民感覚とホンモノと高級感が混在して
ああ、種類は違えど人の住む街だと実感。
そういうような街が全てまほろのような
気がします。
人が悲しみや過去の悔いを抱え、大半は
面倒臭さかったり鬱陶しかったり重かったり
しながら、たまに嬉しかったり満足したりして
手を取り合うような、そんな街。

これで完結という様相で終わりました。
残念です。さらにジジイになる2人を
読みたいです。
ただ困ったことに
2人の顔は瑛太と松田龍平なんだよな。
映画力、すごい。

ところで、麻布十番から見える東京タワーは
かっこ良かった。
スカイツリーは好きになれない。
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2017年10月25日

矢野誠一「新版 女興行師 吉本せい」(ちくま文庫)

演芸関係に大変お強い矢野先生だから購入。
客観的な視点で読みやすい。
現在、なんでしょうか、「わろてんか」という
連続テレビ小説でせいさん取り上げられて
いるようです。連ドラは
全く見ないのでよく知りませんが
きっと脚色して上手に描かれているのでしょう。

せいさんは、遊蕩の亭主がチェーン化した
吉本興業を守りきり今につなげた立役者。
大阪女らしく落語家に上手に取り入り、
どうしたら人が働く気になるか、
また、どうしたら人が演芸を金出して見にくるか、
よく分かっていたようです。
また、警察側にもコワモテ側にも政治家にも
繋がりを作っていたのも大きい。
ただ、非常にヤキモチ焼きで
息子が笠置シヅ子さんと恋愛して子までなしたのに
知らん顔していた、認めなかった、という点で
びっくりでした。
和服から洋服へと変遷したターニングポイントは、
関東大震災とのことですが、
その機に乗じて落語から漫才を重んじたのは
経営者として先見の明と言わざるを得ないです。
そこから「大阪の落語をつぶしたのは吉本」と
言われるようになったそうです。
また、政治家との交流や興行師の中でも
ヤクザ系との交流の事実を知るにつけ、
美空ひばりさんなどもそうだったと思い起こします。
今もきっとそうなんでしょうね。

そして、とうに創業者一族が途絶えた今も
「吉本」といえば、金払い悪いと芸人本人達が
会社を悪く言う風潮は残っていますね。
つまりは「せいの陣頭指揮していた時代の、
えげつないまでの大阪商法に徹した興行師の
集団なのである」がまんま残っているわけです。
さらに、吉本が強くしぶとく侮れないのは、
芸人に好きなだけ悪口言わせる上に、
スキャンダルさえも宣伝に使う巧みな商法。
横山やすし、島田紳助等々、枚挙にいとまがない。

そんな吉本ですが、私は離れています。
一時期ルミネに通いましたが、漫才の質低下に
伴いご遠慮しています。
せいぜい中川家。
サンドウィッチマンや爆笑問題、ナイツの方が
ずっと面白いし落語演芸場での
ホンキートンクやロケット団は受けます。

職業婦人としても黎明期の人だとは思うけど、
私はやはり好きではないです。
この本自体は、面白かったですよ。
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2017年10月16日

「高橋優自伝」(シンコーミュージックエンタテインメント)

著者は優さん自身ではなく
語りおろし、といったところ。

優さん、ますます好きになりました。
ダウンロードで音楽を買うのは苦手で
もっぱらCD購入派です。
古い人間には多分優さんは愛されています。
非常に常識的で人の心を大切にする
打たれてきた人間だから分類すればアナログ。
今時のスマホ片手に全て分かった気になる
一般の若者とは峻別される感じがしていました。

ルーツはお婆ちゃん子。病弱で
小学低学年時にいじめを受けた。
「CANDY」、今まで避けてきた悲しいいじめの歌を
今回読んでやっと聴けるようになりました。
実話だと知ったから。
お姉さん二人、女系家族、そりゃあ優しくなる。
高学年で報復のように女子いじめをする。
中学校では生徒会長するまでに目立ちたがり屋。
高校は陸上夢潰えて自暴自棄。
さんざんやんちゃもして大学進学。
路上ライブを中心とする生活。
秋田から札幌に。
バイトの映画館では真面目に働くも
路上ライブに伴う支出の多さに
食事もまともに摂らないような日々。
卒後、アミューズの雄一さんの目にとまり、
デビューが決まる。
箭内さんのプロデュースでデビュー。
そして現在に至るまでの包み隠さない姿勢での
実生活が満載でした。

自らを「面倒臭いやつ」と言い
我こそが「Mr.Complex Man」だと言う。

以下引用。
ー今でも人に悩みを相談することはないです。
ー親しき仲にも礼儀あり、っていう言葉が大好きで、
…どんな人間関係でも、そこにはある一定の距離が
絶対必要だと思うんですよ。
ー相手が子どもでも誰でも尊敬し合える、
対等でいるっていうことが大事。
ーネガテイブがあればこその、
ポジティブシンキングになっている
気がします。

これ、私じゃん。
優さんも実は一人きりが好き。
飲み会行ってもじゃあね、と
帰ってしまうタイプ。
優さん、繰り返しモテないと言っていますが、
私がうんと若かったら絶対優さんに
心底憧れます。
だから安心してください。
きっと優さんが語っていたような
素敵な女性が現れて、幸せになって
子育ての歌作りますよ。
私、それまでずっとファンでいます。
なんの縁もゆかりもないおばさんですが
母のような恋人のような視線で応援しています。
優さんの歌で、再び若者の歌を
聴こうと思ったし、若者捨てたもんじゃないと
幸せになった一人です。

コンサートチケット取りにくくなったけど、
それだけあなたを支持してる人が増えたと
悔しがりながらも嬉しいファンです。
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2017年10月10日

スージー鈴木「サザンオールスターズ1978-1985」(新潮社)

ふざけた名前の筆者はサラリーマンしながら
ライターなさっているようです。
50歳で青春をサザンに彩られたようです。
それ以上でも以下でもない評論的な
本です。
ただ、これを読む間は
確かにずっとサザン聴いていました。
聞き直したくなるつくりです。
私は筆者より7歳上で桑田さんより3歳下。
更にサザンと同時代を生きています。
「勝手にシンドバット」は衝撃でした。
アルバムも「人気者で行こう」まで全て持っています。
しかし筆者も「いう通り「KAMAKURA」で
高すぎてめげました。
その後桑田さんが少し遠いところに行き、
サザンのサザンらしさが失われ
「KILLERSTREET」で思い復活、「葡萄」で
完全復活でした。私の中でのサザンは、です。
病後の桑田さん個人のアルバムのクオリティは
サザンを完全に食っています。
よってサザンイコール桑田さんというより
桑田さんあってのサザンというバンド、
というのが今の私の思いです。

本書の内容は前期サザンのアルバムの解説です。
サザンが果たした役割なども
少しは触れていますがそこに主眼はない。
特に、コミックソング的な流れはいらない、
「ヨシ子さん」は評価しないという筆者とは
私は意見を異とします。「ヨシ子さん」は良いです。
くだらなさがあっての社会派でありえる桑田さんの
含羞をきっちりプラスに評価してほしい。
その両者が合流した名曲が
「マンピーのGスポット」だと思います。

楽曲及びアルバム解説としては
読むべき内容はありますが、
大瀧さん山下さん、矢沢さん、佐野さんとの
絡みや「先輩達へのおせっかいソング」と括る
一連の人物に対するメッセージソングなどについて
掘り下げて欲しかった。
これはサザン評論ではなくアルバム解説に
止まった本です。

11月に桑田さんコンサートチケットゲットしたので
楽しみにしています。
私の中で桑田さんを丁寧に消化していこうと
思います。
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2017年10月04日

万城目学「パーマネント神喜劇」(新潮社)

一気読み、面白く読みました。
ただ、今までの万城目学さんの作品の中では
軽めでした。
神の独り言辺りはちょっとまどろっこしい。
小説作法としては反則技っぽかった。
縁結びの神の実績描写からの
当たり屋の変貌、
トシとシュンのペアって
杜子春じゃねーか、とツッコミたくなる
件を経ての地震。
社殿の倒壊と神木切断。
神を願う子供達、実はもっと大きなものの
策によって神の復活。
最後の最後までいささか御都合主義も
含みつつ、結果的に私の心に生まれた感情は

信頼の勝利

でした。

気持ちよかった。
裏切りがあまりに多く切ないを通り越して
腹立たしい昨今、
信頼に勝る美徳なし、だと確信。

希望の党?
情け無い。保守対保守の権力者争いに
なぜ信頼を望む私たちは加担しなくちゃいけないのか。
政治家以外、誰も望んでいなかった
衆院総選挙。そうまでして甘言を弄し
てっぺん取りたいか。美しい憲法改悪したいか。
どんどん信頼を打ち消すあなた方に
人としての魅力はない。
こうした打ちひしがれた人々が
棄権すれば、小選挙区の論理で
保守が勝つ事見越してのやり口だって
分かる分情け無い。
全てあなた方の掌中でのやらせ。

そういう状況だからこそ
これくらいのレベル小説でも
私は感動する。
あなた方に加担しない。
パーマネント=永遠、の信頼を
私は信じる。
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2017年09月30日

伊坂幸太郎「AX」(KADOKAWA)

AX、そのまま斧、の意味でした。
蟷螂の斧。暗い人生を歩んできた兜が
出逢った温かい言葉を掛けた女性と
結婚、一人息子の克巳、その家庭を守りたくて
裏稼業を辞めたい。
しかし人殺しを続けてきた身は
そう簡単には許されない。
結局、友情や愛情を知ったがために
彼は自ら飛び降りることになる。
その10年後に、克巳は期せずして
父の仇を討つことに なる。
その援助者は、兜が救った殺し屋。
全て綺麗にしたくてクリーニング屋に
なって、克巳の近くにいた。
兜の人生は、暗かったけど、
悪くない人生だった。
切ない。

兜が一番怖れていたのは妻。
愛情の受け止め方も出し方も
その妻から学んでいたのだろう。
だから怖かった。失いたくないから。

蟷螂の斧は
生死ギリギリで放つ一発。
兜は愛し続けたくて全て隠し切って死んだ。
克巳にとっては永久に良い父親。
妻にとっては永久に情け無い旦那。

いつものようにクールに描ききりながら
優し過ぎて哀しい。
伊坂さん、父親になったね。
重い社会生活と家族の良さが
全面に出た佳作。
一気に読み切りました。
ファンでよかった。
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2017年09月25日

永六輔「坂本九ものがたり 六・八・九の九」(ちくま文庫)

永六輔さんも亡くなっちゃったなあ。
永さんの尖り加減が好きでした。
この本を読むと、マルチタレントだったことが
よく分かります。
八大さんはジャズピアニストから作曲家へ、
そして売れっ子中にアメリカ行っちゃう
先進的な人。
永さんは、
学生時代からテレビ創生期に放送作家として
頭角を現し、「上を向いて歩こう」からの
作詞家稼業、しかし阿久悠やさだまさしらの台頭で
作詞は引退、というところまでの時代。
そして主人公の九は
川崎の色街出身で姉が歌舞伎狂、
賢く聡い反面、やんちゃだった様子。
それを愛情深く、しかし批判的にも
ムダな言葉なく描いています。

エルビスのモノマネ名人で
ドリフターズのバンドボーイ中にスカウト状態で
歌手へ。ナベプロの渡辺美佐の妹、曲直瀬に
見染められ曲直瀬プロへ。
この辺りの当時の芸能事情も
ぜひ読んでみたい。なかなか黒い世界。
しかしそれが現在のプロダクションの原型。
自分の歌の下手さを克服すべく努力。
美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」を
ご本人に許可を得に行き、オーケーをもらい
自分の歌にした事実は、
九自身が本当にお母さん大好きっ子の証し。
そのお母さんが死んだ時のリサイタルの
描写は舞台監督を請け負っていた永さんだから
知り得る真実、迫るものがありました。

正直九さんに思い入れはありません。
けれどこの自分が生きた時代の人々に
ものすごく興味を持っている訳です。
永さんの本ももう少し読んでいきたい。
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2017年09月19日

小林信彦 萩本欽一「ふたりの笑タイム 名喜劇人たちの横顔・素顔・舞台裏」(集英社文庫)

欽ちゃんが、とても素直に小林信彦さんに私淑。
コント55号時代のアドリブの話などは
小林さんもノリノリで聞いている。
私は子供時代に55号好きじゃなかった。
欽ちゃん自身も多才でプロデュース能力の高い点は
評価していますが、好き嫌いで言えば
好きじゃなかった。
そのほかの、渥美さんや森繁さん、のり平さんなどは
以前読んだ小林さんの著書で知ってる。
クレージーキャッツやエノケンの事も
今まで読んだ範疇。
なので目新しさはなかった。
欽ちゃんの聞き上手さで読み切りました。
にしても、小林さんの記憶の良さは健在。
まだまだ長生きして芸能に携わってほしいです。
おそらく芸能人はいっぱいいるけど
喜劇人はいなくなったと感じておられる。
素人の私でもそう思う。
上手い歌い手はいても歌姫や本物のミュージシャンは
いなくなったのと同じ。
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2017年09月12日

能町みね子「お家賃ですけど」(文春文庫)

体調は回復。
夏休み明け、子供によっては「行きたくない」症状。
仕方ないです。
様子見です。
大人だって行きたくないですよ。
いわんや子供をや。

能町さんの文章は乾いていて哀愁がある。
突き放しているようで愛情がある。
恬淡としているようで結構しつこさもある。
これは彼女が、彼、から彼女、に変わる頃
住んでいた神楽坂、牛込あたりの
下宿屋の話。
都会の中の都会、神楽坂は
古いものと新しいものが同居してる街。
築40年の家の大家の83歳の加寿子さんとの
やりとりなどはとても上品で踏み込まないけど
優しさがある。
OLしながらデザイナーのアルバイト、
様々な人に重宝されながら、自分探し中の姿。
心臓が良くなく、結果的に性転換手術直後
心臓の手術もし、相部屋のお年寄りに
愛着を覚える優しさ、愛おしさ。
風呂釜のガスがつかない件などは、
あるあるネタでもあります。
何より、牛込の街に突き立つペンシルマンションを
爆破したい、蹴り飛ばして倒したい、と
願うあたりは全く同感できます。
若いけど、古さの分かる人間にそだったルーツの
物語も挿入されていて
実家のそれぞれの祖母達の話題は
多くの人に分かって貰えるところだと思う。

いいオンナだね、みね子さん。
好きです。
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2017年09月07日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿Ⅺ 妖怪博士・暗黒星」(集英社文庫)

もう一冊刊行されているシリーズですが、
これにて終了。
飽きません。しかしパターンに飽きます。
乱歩調に飽きてきました。
でも、本当に飽きずに読ませます。
特に仕事の往復にはボーっと夢中で読める。
猟奇的、変態的なんだけどいやらしくない。
現在の怪奇モノや推理モノの先駆けだから
安心感が違う。
明智小五郎はきちんとかっこよく解決してくれる安心感。

妖怪博士は二十面相の明智への愛憎。
暗黒星は、出自からの復讐譚。
どちらも面白い。

黒蜥蜴が中谷美紀で日生で上演される。
しかし12000円。
考えちゃう値段。
あ、でも、嬉しいことに桑田佳祐コンサート当選!
こっちは手放しで申し込みましたけど。
posted by 大ねこ at 21:11| Comment(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする