2017年08月08日

竹本健治「匣の中の失楽」(講談社文庫)

いや、しんどかった。
持って歩くのも読むのも。
マトリョーシカか。
章ごとに前の章は嘘だよ、と言われるような
嵌められたような不愉快感しかなかった。
読書感想をリサーチすると
みなさん褒めちぎっておられる。
黒死館殺人事件、ドグラマグラ、虚無への供物に並ぶ
四大奇書らしい。
リアリティのない観念小説、
若い頃読んだ埴谷雄高の死霊へのオマージュだと
いうこともわかる。
入れ子小説であり、薀蓄小説でもあります。
頭を使いたい人やペダンティックを好む人や、
あるいは若い頃の自分ならば夢中だったかもしれない。
しかし、今やもう無理。
ダラダラ続く学者的な、あるいはアホにはわからんやろ的な、
思考のとぐろ巻きに閉口しながら
悔しさもあって読み切りました。
ああ、疲れた。
そりゃ「失楽」ですから救いは求めてなかったけど、
疲れました。

賢い方々が詳しい書評書いていらっしゃるので
是非ご参照ください。
私には、面白くもなんともない小説でした。
まだ虚無への供物の方がわかったぞ。
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2017年08月07日

映画 実写版 銀魂

銀魂、懐かしい。
しばらく読みました。
紅桜ならばわかると思い、
小ねことシネコンへ。

悪くなかったです。
漫画の世界観をきちんと踏襲していて
実写版の良さも満載。
夏休みのエンタメとしては上等でした。

内容がどうこういう作品ではないので
役者さんについて軽く。
銀さんの小栗旬さんはこの路線がいいかと。
まーきの♩の頃の若いゆえのイケメン卒業からの
小栗旬さんにあまり魅力はなかった。
結婚して男としての役者になるには
今ひとつ力量に弱さが感じられていました。
今回のハジけキャラは、その弱さクリア。
おっさん感もいい感じに生かされていた。
シリアス路線よりこっちの方がいい。
菅田将暉さんの新八、まずまず。
菅田将暉さんはこれからの人なので
まだ未知数。
神楽の橋本環奈さんは、いい。
美少女キャラ脱却、銀魂ならぬ役者魂あり。
鼻くそほじってゲロ吐いてブチャイク顔見せて
それで可愛い。
役者として上手いか、と問われると
ちょっと棚上げですが。

新井浩文の人斬り以蔵ならぬ似蔵は
一番の演技力全開。
盲目役なので目を瞑ったままの演技なので
難しかったことでしょう。
中村勘九郎の近藤勇ならぬ勲もさすがの演技。
そして、菜々緒さん、最高です。
又子役がどハマり。
他にも、佐藤二郎、声で山田孝之など
ああ、土方役に柳楽、桂に岡田将生。
中堅どころをうまく配しました。

パロディも満載でナウシカが出て来たのは
笑いました。
安田顕の刀鍛冶が
昔の剣豪映画のパロディではないかと。
あの大げさな感じが原作通りというだけでなく
往年のそうした映画へのオマージュのような
気がしたのは、私も歳をとった証拠かもしれません。
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2017年07月31日

福田利子「吉原はこんな所でございました」(ちくま文庫)

いやいや、ザクッと読むつもりが熟読。
ダメですね。歳とると昔に思いが至ります。
赤線青線廃止後に産まれたわたし。
市川房枝さんがかっこいいと思っていた。
女性は同権であるべきだと思った。
愛知育ちのわたしは、あの有名な
愚かしいほどの派手派手しい結婚式を
正直憎んでおりました。
結婚を理由に仕事を辞めていく女友達を
鼻で笑っておりました。

その癖、新宿の街が好きです。
浅草のいかがわしさが愛おしいです。
渋谷が嫌いな理由は明確で、
情緒が皆無だからです。

以前昼に吉原界隈をぶらぶらした時
夜は怖くて来られない、と思いました。
顔に傷のある方がいそうです。
あるいは、薬物や甘くない危険ばかりな匂いを
感じたからです。

その癖、落語に出てくる吉原は憧れです。
花魁ショーは一度見たかった。
そこには文化があるからです。
なぜ落語の若旦那は勘当されてまで
吉原に通い続けたり居続けしたりしたか、
なぜ身上を潰すほどの高い値段がついたか、
それだけ女性に神性を見いだしていたからでしょう。
確かに人身売買であり、
女性蔑視であることは事実。

しかし、そこには豊かな文化があったことも事実。

筆者の福田さんは、貸座敷(花魁が寝る所)に
客が行くまでの待合の意味があった引手茶屋の
松葉屋の女将。
引手茶屋に幇間や芸を売る芸者がいた。
それらを統括する女将が見た吉原なので
それは生々しい。

貸座敷にも大見世、中見世、小見世があり
いわゆる角海老などは大見世だったそうです。
一般庶民は小見世。
戦争が始まり、兵隊が来るようになって
無理心中もあり、情が移ることもある。
共に田舎出身で、方言が同じだった日には
居続けもあったとか。
なんだかドラマだよなぁ。
今みたいなスマホ時代じゃありえないドラマ。
従軍慰安婦になっていく花魁も。
戦争イコール従軍慰安婦なんだよ。
これはもう反対とかいうレベルじゃない。
韓国の人々が無理やり従軍慰安婦にされた問題も
解決していない。
戦後もそう。
女が、一人で生きていくために
体を売る。
賛成なんかできないけど、反対仕切れない。
男と女がいて、性があれば
これはもう何も言えない。

深い問題。
そこで統括する女将は
文化としての吉原、歴史としての吉原、
そして生活の場である吉原。
だったんだろうと。生身の幇間、生身の芸者、生身の花魁、
そこには豊かな文化にあふれた生活があった。
そして、今もセックス文化は朽ちることなく
もっと自由という名の下、ケバケバしいものに。
これもやがて文化になるだろうか?
否、
花魁達とキャバ嬢やソープ嬢は残念だけど違う。
もちろん素敵なホステスもいる。
けれどそれは個としての素晴らしさであって
システムとして文化ではないと思うのです。
そのシステムそのものが文化だった吉原。
今は昔。浅草しかり。新宿しかり。
でも、現代に生きるわたしは、
その残滓だけでもいい、味わいにいくのでしょう。

売春防止法ができてから松葉屋は
料亭になって、そして今はもうないとのことです。

また、下町行ってみよう。
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2017年07月26日

色川武大「なつかしい芸人たち」(新潮文庫)

バースデー後は健診であります。
乳ガン健診、過去にやっておりますんでね。
2年に一度って感じで行っております。
後は普通の定期健診。
とりあえず大丈夫そうです。
家に帰ってみるとねんきん定期便の通知。
64歳からいただけるらしく、ありがたい。
働き続けてよかった。
適当に長生きしようと決心致しました。

この本に出てくる芸人たちは
健診なんて最も縁遠い人々。イメージですが。
全く知らない戦前のお笑い芸人や俳優、
笠置シヅ子さんや渥美清さん、左卜全さん、
水の江滝子さんなど、かろうじてガキンチョ時代に
テレビで出会っている人々も。
ああ、トニー谷さん。強烈だった。
解説にもあるんですが、
一度も見たことない芸人でも
色川さんのやさしい文章で読むと
なんだか知ってる人達みたいなんです。
だから、知らない人は飛ばして読もうと思っていたけど
結局全編熟読ですね。
ロッパの系譜がタモリに通じ、
杉狂児なるメガネ俳優の映画を見たくなったり、
スネークマンショーの猪狩さんのお兄さんは奇人とか、
柳朝(小朝の師匠)師匠や
ジープにはねられた奇顔の歌笑師匠、聞きたい。
永六輔さんの師匠の三木鶏郎さんはあまりに有名。
松竹歌劇団だけでなく宝塚にも造詣が深くて、
本当にこだわりの色川さんだと感心。
しかもこの全体を通してマイナーな色がたまらんです。
有島一郎さんや金語楼さんもチビの頃
見てます。ジェスチャー、毎週見てた。

シャボン玉ホリデーも全員集合もゲバゲバも
見られた私たち世代って結構最強だ。
今のテレビラジオ界の重鎮たちだと思うんですが
もう少し世論や政治色に媚びない番組
もっと作ってください。
マツコが深夜ほど面白い、それも大事だけど
(深夜枠は常に面白い)やはりゴールデンのつまらなさは
このところ異常値ですよ。

色川さん、面白い。
こうしたサブカルチャーの先駆者を
忘れないようにしていきたいものです。
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2017年07月25日

立川志らく独演会 東京芸術劇場プレイハウス

志らく落語。
自分へのバースデープレゼントです。
本日誕生日。
芸術劇場プレイハウスとは、奮発ですね。
さすが人気がある志らく師匠ですね。

ですが。
前座の牛ほめもわさわさしていたし
はじめの噺、青菜も
小三治師匠や市馬師匠、三三師匠の
ほんわかしたゆったりの青菜は
身にしみているので
場内は爆笑でしたけど、私は
苦手でした。
そもそも、噺のマクラで
昨今のダメ政治を斬るのはいいんだけど
談志だったら、親友の先代圓楽だったらの
くだりから私は笑えなかった。
毒は嫌いじゃないです。
でも、感じたのはちょっとへりくだった
嫌味だったからです。
しかし場内はいちいち爆笑で
志らく人気の凄さが伝わりました。
んん。
落語で笑えれば帳消しだったと思います。
でも、早口の狂気のある畳み掛けに
私は本来の青菜の良さが消されていたように
感じました。

中入り。

子別れ。
これは素敵なバースデープレゼントでした。
鰻。今日は土用の丑の日。
世の中がおかしな様子だからこそ
この噺はしみました。
権太楼師匠のような臭みや泣きがないのに
思わず涙ぐみました。
亀ちゃんのおませで賢い様子が生き生き、
主人公が江戸っ子で照れ屋で
側で聞いてる八百屋がユーモアになり
ただのお涙頂戴に堕さない後味につながります。
それにつけても、おかみさんの
いい女ぶりに惚れました。
亀ちゃんの利発さとおかみさんの上品さと
主人公のまっすぐさが絶妙で
これはいい噺でした。

勝負するなあ〜志らく。
嫌いになれない。
むしろ、素敵なプレゼントありがとうございましたと
お礼申し上げます。
信じるっていいなあ。
家族っていいなあ。
うん、待ってる人がいる。
私も帰ろう。
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2017年07月18日

畠山健二「落語歳時記」(文化出版局)

先日の古本屋で買った本。
落語の演目を歳時記風にまとめた本。
筆者の畠山さんは、演芸作家、演出家。
私より少しだけ年上。
小粋な文章で読みやすいです。
落語初心者向けの書き方が良いです。
私は初心者からの少しだけ成長したらしくて
ここに出てる演目は、ほぼわかるようになりました。
エッヘン。
鮑のし、鰻の幇間、花筏、今戸の狐、
以上は知らない演目。
明烏、蔵前駕籠、大工調べ、
以上は知っているけど実際に見たことがない演目。
明烏は是非見たいやつです。

夏休み間も無く。
またいろいろ見にいく予定。
明日はユーミンコンサート。
ウキウキ。
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2017年07月11日

林家彦いち「楽屋顔」(講談社α文庫)

先日の神保町巡りで
矢口書店で購入。
この本屋さんは結構穴場で
芸能系の本が豊富です。
落語の関連書結構あります。

彦いちさんは一度か二度、聴いたことが。
新作系の昇太さんたちとSWA作ってますね。
木久扇師匠のお弟子さんで
喬太郎さんとほぼ同世代。
木久扇師匠に興味ないので申し訳ありませんが
今ひとつ身は入りません。
写真が多くて楽屋裏の噺家さんの
姿が興味深く楽しく読みました。
いい写真もいっぱいありました。
キャプションも良かった。
頭の良い方だと思いました。
鹿児島の筋肉系だけではないです。
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2017年07月08日

能町みね子「逃北〜疲れたときは、北に逃げます」(文春文庫)

小ねこの彼氏さんが、また上京。
お友達のお芝居見に来た。
もちろん小ねこに会いに。
今日は御茶ノ水からの神保町案内。
水道橋いく方向にある炒飯屋でたっぷりお昼。
さぼうるが満席なのでラドリオでお茶。
古本屋少し周り、二人はお芝居へ。
その道中で読み終えました。

北は、私も大好きで
筆者が訪れた稚内や青森の野辺地からの行程は
私も周りました。
圧巻はアイスランドからのグリーンランド。
これはすごい。
お母さんは小樽出身。おばあさんは宮城出身。
北の血が騒ぐんでしょうね。
私はそういうことはないので
北への思いの熱さは筆者がうんと上。
ふと呟くこの一節。
茨城で育ち東大に進学、東京で生きる彼女が、
➖運よくここで仕事を得て生活はできているけれど、
なんとなく上京してなんとなく生きている私が
こんな忙しい場所に居つづけて、そして稚内の
マスターに「東京の人」なんて呼ばれるように
なっちゃって、これでいいのか、と
空しくなる夜がある。

ここはわかる。

今年の夏の旅行は久々の東北復帰。
岩手からの青森経由で秋田、花巻戻る
周遊旅行、500キロの旅です、
能町さんは車運転なしのバスと電車。
中ねこのおかげで我が家は大きくまわれます。
その日まで後一カ月。
頑張ります。
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2017年07月03日

三浦しをん「政と源」(集英社文庫)

裏切らないしをんさん。
コバルト系で、対象は若者に向けての
小説っぽいですが、なんのなんの。
むしろ十分大人向け。
若者に老人の生き様伝えようとしてる感じ、
それもかっこいいです。

彼女お得意の男子主人公、
73歳から74歳にならんとする
元銀行マンで女房と娘に見捨てられ系の真面目国政。
つまみ簪職人で、
最愛女房に先立たれたヤンチャ系源二郎。
墨田区Y町に住み、渡し舟で行き来するというから
横網ではないかと見当付けています。
いっそ合わないように見える二人が
幼なじみというだけで、互いのさみしさを
半分にしてる毎日です。

源二郎の弟子の徹平と美容師の彼女が
またかわいいし、二人を翻弄したり
縁を繋げあったりしていく話です。
読んでいてとても気持ち良い。
ジジイの身勝手さもあるあるネタで
いっそ小気味良いと思えました。
誰にでも読んで欲しい佳品。
この手の小説にありがちなうっとうしさや
押し付けがましさはありません。
教訓もなければ、難しさもない。
ただそこにある人々の物語です。
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2017年06月24日

山前譲編「落語推理迷宮亭」(光文社文庫)

国会は閉会、東京都議選は開幕。
嘘つきが多過ぎて辟易。
小学校一年生だって
大人のおかしさ気付いていますよ。

本作はアンソロジー。
連城三紀彦ー変調二人羽織。
落語家の落語家による殺人事件。
我孫子武丸ー貧乏花見殺人事件。
長屋の花見の翻案。
伽古屋圭市ー崇徳院。
これも落語ネタから。
快楽亭ブラックー幻燈。
喬太郎もやってるネタらしいです。
これ、人情系刃傷物で面白かった。
大下宇陀児ー落語家変相図。
落語家が死ぬ話。
那伽井聖ー落研の殺人。
うーむ。
結城昌治ー落語 味噌漉し。
これも落語ネタ。文章が一番うまい。
そしてオチもあってムダがなくイチオシ。
都築道夫ー擬宝珠。
これもネタらしいです。奇想天外過ぎて
ピンとこない。

ま、落語を元にした小説って結構あるんだ、
という体験でした。
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2017年06月18日

綾辻行人「どんどん橋、落ちた」(講談社文庫)

推理ヲタなら垂涎、
綾辻ファンならワクワク、
だったかもしれませんが、私は
全く面白くないです。
犯人当ての内容はさすが綾辻さんという
イジワル加減においては素晴らしい。
額縁というのか、外枠の物語が
楽屋落ちみたいで「知る人ぞ知る」
知っているのが通、的なペダントリィが
鼻について嫌でした。
こちとらマニアでもないし通勤途中のエンタメとして
読みたいのに、ちょっとついていけない。
以上です。
犯人当ての結末も言葉遊びが過ぎて
ヘェ〜、以上ではなかったです。

共謀罪法が民主主義の禁じ手で通り、
加計学園問題も内閣府の嘘が横行、
総理への忖度、いい加減にしてください。
自民党、自滅への道まっしぐらです。
自民党が滅びないなら、日本国沈没でしょ。
あんな口の回らない、憲法改悪だけが念願の
坊ちゃん総理をいつまで大事大事するんですか?
そんなに彼の好きなようにさせてあげたいんですか?
道徳教科化しましたよねー。
現場の混乱ハンパないっす。
官房長官も総理も是非小学校の道徳の授業に
参加してください。
「正直」「誠実」「責任感」等の題材準備して
お待ちしています。
評価も確かすることになったんですよね。
しっかり評価して差し上げます。
もちろんその日そのときの授業だけでは
評価しませんよ。
日常の生活態度や友達関係も十分考慮して評価です。
評価結果次第では、進退お考えください。

本のことより、怒りが先走ってしまいました。
失礼しました。
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2017年06月09日

中山七里「ヒポクラテスの誓い」(祥伝社文庫)

浦和医大法医学教室の光崎教授。
今迄も渡瀬や古手川の依頼で
かっこよく解剖して絶対の信頼を
獲得している唯我独尊キャラの老教授。
今回は主人公。対人物はキャシー先生と
研修医の栂野真琴。
古手川もサブキャラで登場。

五人の病歴ありの変死の解剖、という
やや無理のある設定でしたけど
一つ一つの話がよくできていて面白かったので
細かい指摘はやめましょう。
最後にそれをまとめるエピソードも挿入して
全体としてもスッキリ読めるまとまりありです。

真琴さんの医師としての成長記録でもあり
古手川とうまくいったら楽しいのに、という
別のニヤニヤもありました。

知人か否かで態度を変える行為は分け隔てである。
感情を無視するのではない、論理を優先させろ。
部下にとって一番不幸なのは、
暴君ような上司や無能な上司に当たった時ではない、
責任を取りたがらない上司に当たった時が最悪なのだ。

以上は本文にあるキレのある文章です。
いいね。
中山さんのサスペンスには人生訓があります。
人として大切なすべき何かが描かれているので
どんな残虐さやリアルさも嫌味にならない。

好きな作家のお一人となりました。
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2017年06月03日

中山七里「贖罪の奏鳴曲」(講談社文庫)

今日は世田谷美術館まではるばる。
エリック・カール展。
お子ちゃまがいっぱい。
美しい原画に癒やされて来ました。

読んだ本はこちら。
中山さんにいよいよハマっています。
ハズレなし。
渡瀬、古手川ペアは健在。
悪役は弁護士の御子柴礼司。
本名は園部。かつて幼女殺しをして
少年院に入っていた経歴。
オープニングから御子柴の遺体遺棄、
夫殺しの罪状で最高裁まで行った女と
脳性マヒの息子の弁護に携わりながら
遺体遺棄事件の本ボシと渡瀬達に睨まれ
過去が明らかになっていくストーリー。
稲見という少年院の教官が彼の過去を伝えるくだりに
小説の面白味が満載でした。
園部少年が御子柴となって、
稲見の思いやベートーベンの「熱情」に出会って
改心していく様。
嘘崎、次郎という少年院仲間の親への思いに触れ
人が罪を犯す過程、家族のありように
思いを馳せていき、弁護士になって
今の姿、法廷での彼の弁護の鋭さと共に
真実を見極める目。
それらを全て明らかにしていく渡瀬。
なんかかっこいいです。
稲見の言う「贖罪」は
犯罪を犯した者は、生きて償え、
生きて生きて同じ罪を犯した者を救え、
真実から目を背けるな、ということ。
ここに出てくる人々は、皆一様に痛々しい。
家族への言及に作者は厳しさと温かさを
いつも忘れずに持っています。
犯罪の多くは、家族に由来している。
言い得て妙です。
重い。けれど、逃げてはいけない。
渡瀬がカッコ良すぎてたまらんですよ。

後一作品積んであります。
また買います。
全部読みたい。
絶対オススメ、中山七里さんでした。
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2017年05月29日

中山七里「切り裂きジャックの告白」(角川文庫)

今迄読んだ中では意外感は一番少なめです。
まあ、パターンが読めてきたのかもしれません。
臓器移植と切り裂きジャック、
よく繋げたと思います。
前回出演者の古手川さん登場。
親近感ありです。
ペアを組むのは
娘さんも臓器移植対象者である犬養さん。
容疑のあるのは
移植コーディネーター高野さん。
臓器提供者の母親、鬼子母さん。
移植医療の医師達。

結局は、医療ミスの問題が事件に関わり
真犯人は例によって最後の最後
どんでん返しで発見。
この手法、慣れたかもで
じゃああの人か、と冷静に読み進めました。

一節、心に残りました。
移植手術と原子力発電所、
存廃の是非の構造が酷似、というところ。
なるほど。
非日常の世界ですが
実は身近な問題でもあるんだと認識。
でも、面白かった。
また読みます。中山七里さん。
ハマっています。

私事では、土曜日無事に運動会終了。
子供たちよく頑張り、手前味噌ですが
とても良い運動会でした。
しかしその後の大人の飲み会は
よろしくなかった。
ダラダラと、グダグダと、ジリジリと、
そしていささか下品で、
居酒屋わんの料理も美味しくない。
さっさと帰って来ました。
今日はその振替休日で小ねこと久々の新宿。
東南口の近くの海鮮丼、よかった。
アルタの店がずいぶん若者仕様になり
安くてびっくり。古着一つ購入。
ディスクユニオン昭和歌謡館で
門あさみさんのCD購入。

また明日から仕事します。
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2017年05月24日

中山七里「連続殺人鬼カエル男」(宝島社文庫)

久々夢中で読みました。
非常に憂鬱な小説です。
刑法37条の是非から
人は簡単にパニックになり
暴徒化すること、
恐怖は連鎖し、人の肉体は
精神のありようで結構頑張れること、
どんでん返しが続き
読み手は疲れ、けど真犯人は
そういうことかと読み終えても
さらに憂鬱になるような幕切れ。

アイウエオ順に起こるカエル男による殺人事件。
古手川と上司の渡瀬が解決に向けがんばる前段。
途中挿入されるナツオなる悲しすぎる少年
(実は少年ではない)のエピソード。
後半警察に押しかける飯能市民の恐ろしさ。
怒涛のように古手川が犯人確保。
しかしその後ろで彼を操る一人の女。

渡瀬は見抜く。
その女の精神のコントロールを図る男の存在。
しかし確証も証拠もなく泳がして終わる、
と思いきや
因果応報、という言葉で
その黒幕すらやがて殺害される予告の終焉。

憂鬱ですよ。
けど、唸らざるを得ない。
三流ドラマのような「ありえへん」場面もあり
急激に襲う人間の恐ろしさや
サイコパスとは身近にいる戦慄。

今回もピアノが重要な位置にあり
作者の奥さんがピアノ関係者ってことに
関わりあり、なんでしょうね。

優しさと薄情さ、愛と憎しみ、
人が持つ二律背反を突きつけるから
面白いし、怖い。
これはちょっとしばらくハマりそうです。
けど、この憂鬱感、やるせなさすぎます。
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2017年05月20日

柳家権太楼 塚越孝「権太楼の大落語論」(彩流社)

権太楼師匠のきっぱりしたところや
おかみさんが才女だということ、
三三師匠曰く一番今怖いのは
権太楼師匠だという側面等々、
を伺い知る程度には良い本です。
が、1800円の価値はありませんでした。
彩流社って、前にも読んだけど
イマイチな出版社ですね。
せっかくの大師匠でもっと言葉を尽くした
内容ならいいけど、落語家特有な
曖昧な言葉が多くて師匠の本音は
よく見えないし、
経歴一覧でもつけてくれれば
時系列もわかりやすいのに
巻末の注釈は多くは落語家の名前についてで
そこが知りたくて読んでいるんじゃないと
思いつつ読了。
聞き手塚越さんの問題なのか、編集の問題なのかは
素人の私には分かりませんが、
かゆいところに手は届いてない本です。

俺らはプロだから、「じゃ、本番いつですか?」って
いったら、ないんです。俺はいつもそう思ってる。
いつでも稽古なの。……(寄席の場が稽古場と続き)
プロは生きた人のまえで稽古できるんです。

この一節は、いただきます。
我々教師も同じです。
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2017年05月15日

江國滋「落語無学」(ちくま文庫)

江國さんのエッセイは有名ですが
今回初めて、落語、ということで
読みました。よかったです。
さすが、という印象です。
洒脱で要点が明確で優しい。
落語の登場人物に光を当てていて
初めて読むものにも温かい。
落語をもっといっぱい聴きたくなるような文章です。

この時代の著名人にありがちな
「俺、この人のことよく知ってるもんね」的な
優越感がないところが
小林信彦さんに似ている。
他にも三部作で「手帖」「美学」があるようで
絶版でなければ、読んでみたいと
思いました。
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2017年05月10日

詠坂雄二「電氣人間の虞」(光文社文庫)

わざわざネットで探して買いました。
ホラー的、推理的、ついつい読み急ぐ
よくないパターンだったせいか
最終章の急展開についていけてない。
この手の小説に必ずある落としどころが
どこかどこか、とワクワクして最後の方
読み進みました。
小学生のセリフまわしが今風すぎて
軽い感じで、なんだ、このまま落ちずに
終わるのか、と思ったら
え?という急展開。
詠坂雄二自身が出てきて推理推測を
展開して、じゃあ電氣人間はそういうことで、と
気持ち的に決着したのに、いるんだ、そういう形で。
狡さを感じてしまいました。

旧日本軍の隠し武器的なことは
何の結論も出さずに
急に存在することになるのはずるい。

ちょっと期待を裏切られました。
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2017年05月07日

倉知淳「星降り山荘の殺人」(講談社文庫)

このゴールデンウィーク、
本もいっぱい買っちゃって読み切る自信がない。
階段に積ん読、であります。
一冊ずつ地道にやっつけます。

小ねこ彼氏(これからは外ねこ、と呼ぼう)の
オススメ作家の一人。
本当は「過ぎ行く風は緑色」というのが
良いらしいんですが、売ってない。
この本はやたらブックオフにある。

杉下という、上司を殴ったため左遷された若者が
付き人となった星園というスターウオッチャーなる
テレビ仕事の人間と
秩父の山奥に行くことになって事件が起こる。
売れっ子作家、その秘書、ミーハー姐ちゃん、
UFO研究家、不動産会社社長、その部下。
素人にも玄人にも読み易い仕様で
事件は社長と部下の死体で犯人探しとなります。

ウーン、そういう結末かあ。
ちょっと残念。
謎解き好きな向きにはもしかしたら良いかも。
ストーリーや内容の濃さを求める私には
ノリの軽さやいささか御都合主義な点で
辛口となります。
謎解きまでは面白かったですよ。
最後、そんな終わり方、やだな。
破綻はないけど、やだな。
そんな感じ。

さ、次のに行こう。

明日からまた仕事。
電車混むんだろうなあ。
posted by 大ねこ at 18:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月01日

中山七里「さよならドビュッシー」(宝島文庫)

いやあ、面白かった。
全く知らない作者ですが、小ねこの彼氏に
勧められた作者さんの一人です。
このミスで賞を取るだけあります。
一般の本屋ではあまり見かけないので
ネットで大量買いしちゃいました。

まずドビュッシーという、私の世界に無縁なもの、
クラシックには疎いので、果たして読めるか、
と臆していました。
なんの!
ピアノのシーンは満載ですが、
のだめカンタービレのように
躍動的で素人にもその熱さが伝わります。
高校生の女の子独白体なので若者向きか、
と尻込みしてました。
なんの!
どちらかというと根性モノなので
甘さがなくてむしろ小気味良いです。

ストーリー的にも
初めに金持ちの爺ちゃんがイケメン。
急展開の火事。
燃え尽きてしまってからの遺産相続問題。
主人公の全身火傷。
生還からのピアノ特訓秘話連続技。
そしてイジメに殺人未遂に母親の殺害。
さらにピアノコンクール。
指導者の岬さんは探偵的な存在も兼ね
まあ息をもつかせぬ状態。
犯人はすぐ分かります。
しかしそれ以上のどんでん返し付き。
おいおい、主人公がそういうことってありか。
でも。
そこでこの題名「さよならドビュッシー」の意味が
鮮やかに明確になるシステム。
へえ!

嫌味もなくて犯人の思いも伝わり、
岬のかっこよさが嬉しい。
しかも作者さんは岐阜出身。
年齢もほぼ同じ。
出てくる場所は勝手知ったる名古屋のあちこち。
名古屋弁も満載。
これはお近づきになりたい要素だらけで
読むしかない。
だから読書はやめられない。
posted by 大ねこ at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする