2017年03月02日

青羽悠「星に願いを、そして手を。」(集英社)

王様のブランチで紹介していて
可愛い高校生16歳が書いた本、しかも
ご本人も可愛い。買っちゃいました。

16歳らしいか、意外と大人っぽいか、
どうかなと期待しながら読みました。

うーーーーん。
悪くないです。
でも詰めは甘いし、経験値不足による
若書き感は否めないし、
せっかくの館長・細山・乃 々の人間関係の
クライマックスの書き込みが浅く、
全体に伊坂調がきつい上、
大人になった主人公たちの生活感が希薄。

一つ一つのエピソードや真っ直ぐに生きる
姿には好感が持てました。
でも底は浅い。
高校生以下が読むにはいいでしょう。

しかし、おばさんが読むには
少々期待外れでありました。

夢は叶うものでもなく待つものでもなく、
見果てぬ夢として一生抱えていくものでした。
今はそのように思います。

小ねこの彼氏は先ほどご帰宅。
5日間我が家の住人となり
料理も作ってくれて中ねこもお気に入りです。
うまくいくといいな。

ムッシュかまやつさん亡くなりましたね。
また一時代が終わった感がありました。
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2017年02月26日

矢野誠一「落語と歩く 鑑賞三十一話」(河出文庫)

昔気質の江戸っ子、落語に造詣の深い
矢野さんは文体も江戸っ子で
昭和の40年代に既に東京が江戸から
遠く離れていることを嘆いています。

私は斉藤和義さん大好きですが
その歌の中でも「メトロに乗って」は
お気に入りです。
あの歌を口ずさんで東京大ねこ散歩するのが
仕事引退後の夢の一つです。
1日乗車券買ってメトロ巡り、いいな。
こういう本を読むとより行ってみたくなります。

噺は目黒のサンマから始まり明烏で終わります。
らくだは、下落合辺りとか、
文七元結は、浅草吾妻橋、
長屋の花見は、何と王子飛鳥山だった。
もちろん大門吉原は定番中の定番。
知っている地名、行ったことある場所もたくさん。
今は余り演られていないであろう噺も掲載。
「お若伊之助」(根岸)「わら人形」(北千住)
「孝行糖」(後楽園)「鍬潟」(旧両国国技館)
知らないです。
演られていたらすみません。にわか愛聴者なので。

間も無く三月。
今日から小ねこの彼氏が京都から来ます。
私は成績との闘いが本格化します。
その後に来る春の訪れを
楽しみにもう一頑張りします。
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2017年02月22日

能町みね子「オカマだけどOLやってます。完全版」(文春文庫)

能町さん大好きでーす。
久保みねヒャダ、結構見ています。
ライブにも行ったしね。

この本は、まだ手術前に
格好は女になって、会社の人も男だと
知らず知らせずにOLやってた頃の
blog上の書き込みをキチンと仕上げた本。
チン子が邪魔で、すごく男が好きな訳でもない。
ただ男性でいることが嫌だった時代。
オカマという蔑称をあえて使う感覚は
マツコさんと同じ。

人として両者ともに非常にまっとう。
能町さんに至っては東大ですから
インテリでもあります。
ここでは笑い話として軽く書かれているけど
実際は、多く悩まれたとお察しします。
性同一性障害という病名も好きじゃない。
わかります。
ただ病名がついた方が便利なことも多いんでしょう。
みんな違ってみんないいんですね。
そういう受け入れを今後もしっかりしていきたい。
こういう人たちがカミングアウトして
自分を卑下してメッセージを送ることに
強く共感していきたいと思います。


先日東京都北部で起きた連続放火事件の
犠牲者が、うちのクラスのお子さんの家でした。
命は無事で、本当に良かった。
しかし憤りは止まりません。
早く逮捕して欲しいです。
金某氏の殺人事件もずっと世を賑わせていますが、
わかりきった肉親同士の骨肉の争い、
前時代的な世襲のテーマに
違和感と愚かさを感じる日々です。
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2017年02月16日

マツコ・デラックス「デラックスじゃない」(双葉文庫)

マツコさん大好きでーす。
本書読み、一層好きになりました。
以下、彼女の語録。本書より。

だって、所詮オカマだよ。女装だよ。デブだよ。
こういうところは、忘れちゃいけないと
思ってるの。

オカマは、いい言い方をすれば中立、
悪い言い方をすれば、仲間外れ。

アウトはグッドの裏返し。
この世に捨てるゴミはなし。

アタシ、何を手に入れても満足できなかったし、
幸福感も分からなかった。

紅白は、「こんな変なもの、観られてよかったね」
とか「こんなの、普通の低予算の番組では
観られないよね」ってモノを観せてくれれば
それでいいのよ。

AKBはダメ、ハロプロは良い。

コンプレックスから、歪んだジェラシーが
生まれるわけ。

記者クラブ制度で、政治家にぶら下がっている人たち
って、特権階級意識。
そうやって同化して、権力側に
魂を抜かれてしまうのよね。

ネットっていろんな産業の芽を摘んで
しまうだけじゃなくて、
個人個人の「志」という芽も
摘んでしまう気がするのよね。

テレビの昔の9時台が今は11時台なのよ。

ユーモアがあり賢いし、
モラリストだと思います。
自分を知り、分相応を知っている。
好きです。
彼女のテレビは大抵観ています。
安心感であり、笑い飛ばせるからです。
いつもいい人だなあと
感心し、尊敬して観ています。

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2017年02月04日

相倉久人、松村洋「相倉久人にきく昭和歌謡史」(アルテスパブリッシング)

久しぶりに小ねこと銀ブラ。
今日は三河屋、若菜、蕎麦のよし田、
彼女の誕生日プレゼントで
カバンのTANIZAWAで約1万円の財布、
喫茶モナリザでケーキタイムして帰ってきました。

本書読み終えました。

非常に示唆に富んでいるので
以下引用や勝手なまとめ方、
及びトリビア的な情報ピックアップで埋めたいと思います。

1:エノケンを聴き直す
2:服部良一を聴き直す
笠置シヅ子「買物ブギ」はアドリブで「あゝしんど」
作詞の村雨まさをとは服部良一のペンネーム
つまり作詞作曲両方っていうこと。すごい。
「青い山脈」は、青春謳歌の標本だが、
「古い上着よさようなら」とは良い。
今はその古い上着をわざわざ引っ張り出して着ようと
するおろかな政治家がいることを指摘。
我が意を得たり。
3:戦時歌謡を聴き直す1
4:戦時歌謡を聴き直す2
上田敏「裏町人生」は1937年作、
洋楽と日本的要素があって適度に湿っぽい、
だから受けた、そうした余裕が軍部や政府に気に入られず
発禁処分になる。
1937年は同時に服部良一「山寺の和尚さん」
淡谷のり子「別れのブルース」「海ゆかば」と
戦争賛美と洋楽系歌謡の両方が混在。
5:美空ひばりを聴き直す
戦前の流行歌にジャズ要素満載で
戦後笠置シヅ子と服部良一で繋いだ。
ひばりは耳で聴いて作品を仕上げる。
6:坂本九を聴き直す
「上を向いて歩こう」は1字1音だから
あの独特な歌い方になる。
九ちゃんはテレビスターなのに、エノケン以来の
日本の伝統的な芸能をつなぐことができた
数少ない芸能人だった。
「新八犬伝」ナレーターとともに主題歌も。
照明にも凝った素晴らしい人形劇だった。
(全く同感。これを見るためどれだけ苦労して帰宅したか
それだけ夢中になった番組でした。)
7:ハナ肇とクレージーキャッツを聴き直す
谷啓のコメディセンスは飛び抜けていた。
ジャズは器楽演奏主体だから楽器のオチが持つ
言語性に対する関心がジャズメンをは高い。
だからハナモゲラ語をはじめ変な言葉で
応酬しあうことが多い。クレージーキャッツ然り。
8:アイドル歌謡を聴き直す
ジャズやロックは音楽界、レコ大は芸能界。
百恵の頭の良さやインタビューの切り返しは
キレッキレで鋭かった。
聖子はバカっぽい演技ができる芸人風の知恵を持つ。
明菜は歌に対する違和感でふくれっ面しながら成長する。
河合奈保子は無意識過剰でいて自分の世界を歌い切る実力。
(河合奈保子大絶賛。聴き直すカチあるかも)
9:ニューミュージックを聴き直す
ユーミン都会的、みゆき演歌っぽい、
と割とあっさり切られている。が、
忌野清志郎大絶賛。
10:平成の〈昭和歌謡〉を考える
シャ乱Qは宇崎がダウンタウンでしたロック演歌を
踏襲したロック歌謡を目指した。
小室哲哉は完全に洋楽っぽい顔。
「恋するフォーチュンクッキー」のメロと
「函館の女」は同じミミソミラソミレド。
ソウルフラワーユニオンが行なった
被災者支援の活動は照明歌謡を引っ張り出して
歌った活動で、何百万枚売ったという活動の
対極、小分けの活動であった。

日本的なるものの呪縛から、私たちは結局
逃れられていないってことです。
たかが音楽されど音楽。
好きなものをこれからも胸張って聴こうと
思えました。
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2017年01月29日

伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」(新潮文庫)

読後感、うー〜〜んでした。
連作短編集、を確認しなかったのと
本の帯「思わずあっと声が出る。」に惑わされたのと
今までの伊坂ワールドに冒され過ぎているのとで
スッキリしなかったです。

首折り男が死んじゃったこと。
黒澤が泥棒のみならず探偵として優秀なこと。
若林夫婦の意外な「僕の舟」が面白過ぎたこと。
恨みとか妬みとかが、溢れているにもかかわらず
神様や幽霊や天の配剤や偶然の必然があって
なんとなく救いになるという連作だったこと。
最後の「合コンの話」は、何を目指すか不明で
ただピアノつながり(まさに協奏曲か)と
首折り男事件が同時系列で起きているという
無理やり感が私には否めませんでした。
ていうか、この最後の短編で
話全体のオチを期待し過ぎていたのかもです。

緩やかなつながりで人生の出会い的なものは
感じ取れましたけど、正直期待ハズレだった。
いやいや、一つ一つの短編はよくできていて
どれも面白いです。
結末を期待させ過ぎる帯や煽り文に問題あり。

しかし、高村薫さん読んだ後だから
思うのは、会話文多用で成り立つ昨今の小説の中では
伊坂さんは白眉です。
漫才的、ウイットユーモア、韻を踏むラップ的な、
仕込まれた言葉、など、読書通にも
飽きさせないつくりは見事です。

きっとまた読みます。
仙台でまた書き続けてください。
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2017年01月21日

高村薫「土の記 下」(新潮社)

高村薫さん、最後の1ページって
必要だったんですか?
読み終わる寸前の崩壊感にしばし茫然です。
中島みゆきさんの歌に「あり、か」がありますが、
まさにそんなのありか、です。
高村薫さん、でもこの1ページのために書きましたね。
悲しすぎるこの結末のために。

私、茫然とした中で一瞬に思いました。
私たち人間の残酷さを。
ニュースに流れる多くの情報は他人事。
聞き流して終わる。
もちろんマジに関わっていたら
鬱になってしまう。
だから私たちは忘却するようにできている。
斉藤和義さんの最近のアルバムにも
「時が経てば」という歌もあります。
それらが一瞬のうちにばあーっと浮かびました。
ちょうど伊佐夫自身が、東日本大震災の時に
どこか他人事だったように。
軽い脳梗塞も起こし、老齢を感じつつ
にわか農夫として、亡き妻の妹久代に
愛されつつ照れている男として、
天寿を全うしようとしていた時に、
まさか自分が天災に見舞われるとは。
私たちも、いつどこで何が起こり
襲われるかわからない暗示。

人は卑小であること。
その癖、生ある限り命を育み続けること。
些細なことに一喜一憂して、
大きな出来事に関心を持たないふりをして。

帯に
始まりも終わりもない果てしない
生命のポリフォニー、とあります。
読み終えて
その文言がズシンと土の塊となって
私の心に降りてきたのでした。

憎しみも喜びも
奈良の土地に埋め込み
人々と関わって鯰やトイプードルと関わって、
家族とは支えなのか不要なものなのか、
答えも出さないし出せないまま、
ボケて行く己の脳髄と闘いながら、
伊佐夫は私の前から去りました。

ああああ〜〜んって叫びたくなるのでした。

重い読後感。
なのにどこか爽やかなのでした。
多分、伊佐夫は生き切ったと
思いたいからでしょう。
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2017年01月14日

高村薫「土の記 上」(新潮社)

高村薫さんは本当の小説家だと
心から尊敬します。
かぎかっこ一切排除。
全て地の文のみ。
最近の読みやすい中身の薄い
身辺雑記的な「で?」的な小説に
完全に対峙しています。
伊佐夫は奈良の田舎に入り婿として入り、
シャープの社員として働いた後
土地を守り、米や茶や野菜を育てている。
土のサンプルを集めるなど
土地の人間以上に土地に根付いている。
今70歳を越えて、少しのボケも入りつつも
妻を亡くし、娘はニューヨークに行き、
知り合いが他界する中で
日々農業に従事していきている。

妻、昭代は16年間植物人間状態だった。
交通事故。バイクでトラックに、
自分からぶつかったのでは、と疑問が残る事故。
浮気の疑惑。冷えた夫婦仲とそれ以前の
幸せだった頃の記憶が日常的に交差している。
その家系は女系で、どの女も男関係で
なにがしかの問題をはらんでいるだけに
疑惑は晴れることがない。
娘、陽子は優秀で東大に進み、
子供の彩子をもうけるも、やはり離婚。
陽子は、奈良の土地から離れることで
土地の者や伊佐夫からはよそ者なスタンス。

伊佐夫が、フランクシナトラの
「ニューヨークニューヨーク」をスイングしながら
ニューヨークの街を思い浮かべつつ
土をかまったり、昭代の妄想をしたりする場面は
あまりに秀逸でため息が出ました。

人が1人で生きるその姿に
感じ入りつつぞわぞわしつつ、
読みにくい文もありつつ、
続きが気になって読み進めました。
人生。
生きるための植物たち。
米の生育に合わせ章立てしている文章に
引き込まれました。

下巻、どうなるのでしょうか。
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2017年01月07日

全国ローカル路線バス ブルーガイド編集部

北海道から西表島までさまざま走るバス。
1日数便から1年に1回しか走らないもの。
すんごい距離を走るバス。
スクールバスなのに一般客も予約で乗せるバス。
鉄道の代替から、バス停の名前が人の家の地域。

レンタカーや鉄道の旅、飛行機を使っちゃうので
路線バスを使うことなどないんです。
でもテレ東のバス旅番組見ていると
やってみたくなります。
その代わりに買った本。
実際にあの旅はかなりの冒険。
できません。
ザーッと読みました。
旅の時、もし近くにあって
チャンスがあればトライしてみたいと思います。
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2017年01月05日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿6 黄金仮面」(集英社文庫)

黄金仮面はアルセーヌ・ルパンっつー
乱歩、♪───O(≧∇≦)O────♪
です。
いいところのお嬢さんが、情婦になるんですが、
その名も不二子。大島姓だけど。
明智小五郎の相方、おなじみ浪越警部も
ドジ加減において銭形のとっつあんでしょうし。

私が知ってる乱歩の作品、
いわゆる少年探偵団ものに近づいてきた。
変幻自在、どんな苦境もものともせずに
変装して決して弾に当たらず
ルパンと互角に渡り合える明智君。

現在のコナンやルパン三世や冒険活劇の
原型がここにあります。
そう思うと乱歩はすごい。
盗むものは、真珠ー志摩の女王、
奈良の玉虫の厨子、飛行機、
変装するのはフランスの外交官的なVIP、
スケールが違う。
塔の上に登るわ、パラシュート脱出はあるわ、
部屋全体がエレベーター仕様だわ、
荒唐無稽すぎて逆に惹きつけられます。
道化師の象徴のような黄金仮面は
口が三日月型で、いつも笑ってるように見えるアレ。
私たちが知らず知らず刷り込まれている
紋切り型が全て詰まっていました。
そうか、全てはここが発祥の地かと
気づくと一層面白さは増します。

一気に読み、ルパンも明智も
互いに勝ちもせず負けもしない結末に
うまいなあと頷かざるを得ませんでした。
当時の東京の風物詩や土地の様子、
国際色も豊かに非常によくできた
作品でした。
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2016年12月30日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿5 魔術師」(集英社文庫)

これはよく練られた作品。
のちの怪人20面相の元になるような
要素てんこ盛りの活劇推理小説でした。
横溝作品もかくや、という犯人の呪い。
父親を生き地獄に晒された男の
一生をかけたドロドロの復讐譚。
しかも娘さえ取り替えての用意周到さに
これだけ人は復讐に燃えられるものかと
薄ら寒ささえ覚えます。
加えて殺人の様の多様さ。
ショウでの実演バラバラ殺人、
時計塔でのポオばりの時計針での未遂、
ピストル、舌を噛む、
人間心理につけこむ脅迫状、
日に日に恐怖を増すやり方、等々。
加えて、明智小五郎の恋物語。
二股ですぜ、色男。
犯人の住まいが船っつーのもなかなかな手法。
さらに、解決したかに見せて
まだまだ呪いは続くというくどさ。
いわゆるどんでん返しもあり
活劇推理小説の白眉でしょう。

乱歩が、歴史に残る作家だと実感。
前作のような駄作もありますが、
量産作家にはありがちなことでしょう。
年末、年始、ぼんやり楽しむにはうってつけです。
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2016年12月27日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿5 猟奇の果」(集英社文庫)

変態乱歩ここにあり。
ストーリー的には大きく破綻。
品川さんに瓜二つの怪人。
猟奇好きの青木さん。
初めは淫売宿でのサドマゾごっこメインだったのに
後半、明智小五郎さん出てきたあたりから
もう完全に別の小説。
共産党非合法活動に恐れる乱歩は
でっちあげとも言えるストーリー展開にシフト。
工場主やら警視総監やら総理大臣やらの瓜二つ続出。
挙句の果てに、人間完全整形術を行う
気が違った医師登場。
最後にその人、頭打って本当の発狂者になるって
ちょっとすごすぎます。
明智さんもやられたはずなのに
なぜかちゃっかり復帰して事件解決しちゃう
素晴らしき御都合主義。
登場人物の中で一番の猟奇好きは青木さんですが、
いつの間にか主人公がすり替わって
今まで幽霊男とか呼ばれていた犯人に
青木さん自身も整形させられたらしく
存在感が急になくなっていました。

もうこの作品は、アレですね、
センセーショナルに扇情的に書きあらわしたもので、
当時の東京の各地の面白さを楽しむにしくはないです。
内容求めちゃいけないです。
主題よりデティール楽しむ小説でした。
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2016年12月23日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿3 蜘蛛男」(集英社文庫)

長編小説。
連載を意識しての筆の運びが顕著。
「さて、次はどうなるでしょう!」的な。

特徴的な美人を狙う博士。
犯人探しをしていた畔柳博士が実は犯人、
というのが、前段の重要事項。
それをあっさり突然登場した明智小五郎が解決。
後段は、犯人と明智の対決の構図。
ぼけぼけして逃してしまったり
ありえん警察のお間抜け捜査があったり、
ツッコミどころ満載でした。
最後に自分から死んでしまい、
ご都合主義も満載。

でも、読んじゃいます。
変態的なプロット、差別感いっぱいの文章、
エログロナンセンスで読ませます。
人の「いかんなあ」という部分にヒットしてきます。
人の心にひそむ妖しい思いに
不敵な笑みを浮かべて近づいてくる文章です。
下世話なゴシップについつい聞き耳立てる、
あの感じです。文春➖センテンススプリング、的な。
好きじゃない。けど、気になる。
嫌いとは言えない。
そんな世界観。
まだまだ続きます。

ところで、犯人は、ちっとも蜘蛛男じゃないんです。
ただの看板題名。
まさに文春の新聞広告の見出しレベル。
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2016年12月11日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿2」(集英社文庫)

本書は、中編2編収録。
「一寸法師」
「何者」〔朝井リョウのとは違う〕
まず「一寸法師」は今なら発禁もの。
つかってはいけない言葉のオンパレード。
小人症であろう犯人への差別感満載。
極悪人として生きざるを得ない状況説明は
もちろん描かれているけど、根本的に差別。
不具者としての仕方なさ以上に
人としてダメっていう猛烈な差別。
1925年ごろだから大正の頽廃や軍事色これからの
時代背景で、猟奇を好む人々も多かったんでしょう。
推理ものとしての面白さより
そっちの妖しさで読ませるお話でした。

「何者」の方は有名にならないだけで
私も解説者も絶賛に値するお話でした。
本格推理ものです。
当時の世相が、こうした真面目な推理ものを
要求していなかったとしか思えない。
クオリティは高い。
被害者が犯人探しの探偵役、
犯人が分かった後のどんでん返し、
明智小五郎不在かと思いきや
思いがけない人間に変装、
足跡トリックの妙、
何者とは、犯人・語り手・明智、全てを指す。
凝ってました。
しかも動機の一つが徴兵逃れって、
時代背景だと思います。
その辺り全て緻密に計算されていて
なかなかの小説でした。
しかし、結局乱歩はこの道でなく
猟奇方面〔本人いわく、自分の体臭のする〕の
作品で有名になっていくようです。
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2016年12月06日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿1」(集英社文庫)

1ですから、今後続きます。
江戸川乱歩は小学校時代ポプラ社か
シリーズでいくつか読んだくらいで
実は詳しくない。以前小林信彦さんの本で
大した人だと知り、これは読まねば、と
思っていた矢先、文庫コーナーで
このシリーズがあるのを知りました。
今の所5巻まで購入済みです。
ウキウキ。

明智小五郎の作品の書かれた順ですから
時代の変遷もわかりやすい良い企画です。
1 D坂の殺人事件
サドマゾの引き起こした痴情事件が殺人事件と
見誤る話で、意表をつくもの。
2 幽霊
後ろ暗い男が恨まれていて
その恨み主が死んだにもかかわらず幽霊として
現れてノイローゼに陥りかけているのを
それは実は本人生きていると見抜く。
3 黒手組
黒手組と言われる悪党にお嬢さんが誘拐された と
金持ちの悩みに、実は狂言でお嬢さんは
駆け落ちしていたというオチ。
4 心理試験
ドストエフスキーの「罪と罰」に似た作り。
金のため老婆を殺した賢い男。
心理を知り尽くして行動したようだったのを
明智はさらに上をいく心理試験で見抜く。
5 屋根裏の散歩者
全てに興味の持てない男が犯罪には興味をもち
屋根裏を毎夜彷徨ううちにモルヒネをいびき男の
開いた口に投下する殺人を実行。
目覚まし時計です自殺ではなく他殺と見抜き
〔死ぬ人間が目覚まし時計をセットするわけがない〕
追い込むあたり、サクッとしているくせに
凄まじい。

面白い。
読みます。
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2016年12月02日

柳家小三治「柳家小三治の落語5」(小学館文庫)

小三治師匠の声が聞こえてきそうな本でした。
収録は
付き馬
鼠穴
青菜
出来心
馬の田楽
あくび指南
味噌蔵
でしたが、このうち青菜、出来心、馬の田楽は
幸い聴いたことがあるので、ああ、まんまだと
嬉しくなりました。
マクラからの噺へのもっていきかたや
デティールに出る登場人物の表現力が
至芸の証左だと思います。

ああ、また聴きに行きたいです。
posted by 大ねこ at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月30日

広瀬稼和生「僕らの落語」〔淡交社〕

初めて聞いた会社からの新書。
1300円しましたけど、いい本でした。
現代を代表する落語家の対談集。
広瀬さんがコーディネートして時々口を挟み
いい感じでまとめてあります。

最初に活動家米團治と柳家花緑
遺伝子的すでに名人落語家一家。
非常真面目な対談。
米朝師匠曰く、落語とは
おじいちゃんが孫に聴かせるおとぎ話、であれと。
至言ですね。
感謝を持たない若者にどのように対応すべきか
悩む花緑は弟子との距離感に悩んでいるわけで、
血の中に落語があるものとそうでないものとの
せめぎあいとも読めました。
さすが米團治さんはさらに一回り年上なだけに
諭すような場面も。
ちなみに米團治さんはほぼ私と同世代。

二つ目は、今をときめく天才肌の
春風亭一之輔と桃月庵白酒。
全部を覚えきらずともじぶん流に料理して
爆笑させる落語に変換してしまう。
おそらくは実はかなり聴き込んだり学んだりしている
と、踏んでいます。
けれどそれを感じさせるのは野暮だとも知っている
江戸前な二人です。
彼らはこれからの落語界の風雲児であり牽引者だと
何度か聞いた私はそう思います。

三つ目は、ユニークな存在の
春風亭百栄と三遊亭兼好。
百栄さんは新作派で兼好さんは古典。
一人者、ではありませんが
それぞれアメリカ遊学後、サラリーマン生活後に
落語界の仲間入りをした異色の経歴持主。
世間を知った上での落語は、味があるもの。
私は兼好さんのあの子元気が出る声が好き。
いわゆる正統落語ではないのかもしれないですが、
私はこれからも追いかけたい落語家さんです。

最後は女性落語家さんの柳家こみちと三遊亭粋歌。
こみちさんは小三治さんの会で伺った。
粋歌さんは新作が多いようですね。
まだ聴いたことありません。是非次回何かの折に。
お二人とも40代っぽいです。
女だからという苦労もあるようです。

まだまだ知らない方も多いです。
こうした良心的な本がこれからも出てほしいです。
落語家さんの会で感情をもっと知りたい。
ネット検索しても情報の少ない方が多いです。
若者に興味を持ってもらうためにも
もう少し情報公開は必要です。
広瀬さん、同世代人間として応援しています。


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2016年11月27日

湯浅学「ボブ・ディラン」(岩波新書)

ノーベル文学賞を取ったから
にわかに読むことにしました。
ミーハー。
「風に吹かれて」「like a rolling stone」くらいしか
知りませんです。
好きなアーティストが彼から影響受けている事は
知ってます。
今からどの楽曲やアルバムを聴けばいいのか
知りたかった。
でも結局どれもいいらしく
今はより困惑して迷っています。

ていうか、英語じゃないですか。
やっぱり彼が言いたい事は
わからないだろうって考えちゃうんですよ。
ここが一番入りづらいところです。
若い頃なら歌詞カード見て辞書と首っ引きで
調べておお〜ってなるんでしょうが、
今はその気力に欠けています。
それで敷居を高くなっているのは事実です。

リトル・リチャードやバディ・ホリー、
やがてウディ・ガスリーに強く影響受けて、
ニューヨークに来てフォークシンガーとしての
地位を確立。
本人には社会派とか活動家の意識は皆無にもかかわらず、
周囲がそれを期待する事への重圧。
ビートルズとの交流。
「like a rolling stone」は当時のラジオでは長すぎる曲で
A面B面に分けて録音され流したところ
きちんと全部流せとリスナーの要望が出たこと。
嗄れ声で歌う彼が、豊かな声量で歌ったり
表現豊かなシンガーとなっていく過程。
1978年2月に初来日コンサート。
ユダヤ教からボーンアゲイン派教徒になり
信仰を元にしたアルバムも作った事。
トラベラーとしてツアーし続け
家庭を顧みず生きていた頃。

読み終えて思ったのは、
やはりプロテストシンガーではない、
言葉と音に魂を捧げたアーティストなんだと
いうことです。
その意味で、文学賞は妥当だと思います。
英語圏で生きていない私には
理解しきれないことも多いと
思いますが、やはり湯浅さんオススメの
97年制作「タイムアウトオブマインド」辺りから
聴きたいと思います。
「フリーホイーリン」「時代は変わる」もいいらしいですね。
目安がたったんであとは購入ですなぁ。

昨日学校の周年でした。
いろいろ疲れました。
posted by 大ねこ at 14:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」(文春文庫)

いやいや、まさかこうなるとは。
ラスト100ページあたりからの
大阪城炎上から大団円まで
まさか泣かされる系になるとは。
万城目さんはどちらかというと
笑えるタイプの作風と信じていたし、
このタイトルからの印象ではハッピーエンド予測
してました。軽率でした。

風太郎はプータローでありながらも
真面目一辺倒で闘い抜きました。
ひさご様は予想通り秀頼公でした。
その最期に立ち合うよう高台院様が風太郎を選んだ。
その運命を呼んだのは、ひょうたんの神?の
因心居士。見事、果心居士と出会い
彼らは行くべきところへ行きます。
しかし、彼らは人の生き死にには関われない。
残菊との闘いには勝ったものの
その時にはすでに黒弓も蝉も常世も……。
風太郎が預かった秀頼公の子供は
もっとも彼を裏切ってきたと思っていた
百市に託した。そこの手伝いは居士達の力。
しかし、生き死にには関われないからこそ
風太郎は生き絶えることになるのでした。
壮絶すぎて言葉も失う描写の連続です。
戦国の世とは、実にこの様に凄惨であったと。

大真面目な戦国末期の忍びたちの
居場所のない景色でした。
でも生きてきた。
風太郎はしっかり全ての約束を果たしてきました。
ただ一つ、この争いが終わったら
芥下と共にひょうたん屋をやるという
約束だけは果たせなかった。
切な過ぎました。

読ませられました。
読み終わり、しばし茫然でした。
こりゃないぜ、万城目!と思いました。
幸せを与えて欲しかった。
辛かった。
でも、多分作者は戦乱の世の非常をも
私たちに伝えたかったんだと思いました。
久々にずっしりと重みを感じた本でした。

posted by 大ねこ at 18:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月13日

万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」(文春文庫)

今日は教えた子でNHK児童合唱団に入っている
お子さんの発表会をオペラシティで見てきました。
オペラシティ!初めてです。
初台という駅で降りたのも京王新線にも
初めてです。なんでも行ってみるもんです。
小学二年生から18歳くらいまでの
その教え子以外は知らない子ばかりですが、
聴き終わって涙ぐむ自分がいました。
盛大な音楽会、と言ったところでしょうか。

昨日今日の遠出?で読み切った上巻。
風太郎はプータローと読みます。
つまりは優秀な忍者なんですが柘植屋敷から
追い出され何もすることがなく京都で
ひょうたん作りを始めるニートであります。
ひょうたんは豊臣秀吉のトレードマーク。
なんだかんだ珍重されていて
ひさご様と言われる引きこもり青年のお世話もしたり、
忍者仲間の常世繋がりでねね様=高台院様とも
繋がりができたところで、徳川氏と豊臣氏のいくさになった。

全ての行動は実は忍びの者たちによって規定され
そのレールを走っている感じのある風太郎。

友人?のような腐れ縁のマカオ帰りの黒弓。
女の格好をして高台院に仕えている常世。
同期で好きにはなれない蝉。
ひょうたん作りを指導してくれる芥下。
所司代に仕えているらしいかぶき者の残菊。
高貴な方病弱な方と言われながら蹴鞠の上手いひさご。
そしてひょうたんの精?のような時々現れる因心居士。
相方に果心居士というのもいるらしく、
互いに会うためには風太郎のチカラが必要らしい。
一つ一つのエピソードは分かりやすいのですが、
だから、どんな繋がりなのかと。
さっぱり分かりませんです。
でも面白い。
例の家と康が離れた鐘の話も出てきて
歴史のあの頃かと徐々に楽しさが深まってきています。

下巻で謎も解けるとワクワクです。
posted by 大ねこ at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書の記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする