2017年01月05日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿6 黄金仮面」(集英社文庫)

黄金仮面はアルセーヌ・ルパンっつー
乱歩、♪───O(≧∇≦)O────♪
です。
いいところのお嬢さんが、情婦になるんですが、
その名も不二子。大島姓だけど。
明智小五郎の相方、おなじみ浪越警部も
ドジ加減において銭形のとっつあんでしょうし。

私が知ってる乱歩の作品、
いわゆる少年探偵団ものに近づいてきた。
変幻自在、どんな苦境もものともせずに
変装して決して弾に当たらず
ルパンと互角に渡り合える明智君。

現在のコナンやルパン三世や冒険活劇の
原型がここにあります。
そう思うと乱歩はすごい。
盗むものは、真珠ー志摩の女王、
奈良の玉虫の厨子、飛行機、
変装するのはフランスの外交官的なVIP、
スケールが違う。
塔の上に登るわ、パラシュート脱出はあるわ、
部屋全体がエレベーター仕様だわ、
荒唐無稽すぎて逆に惹きつけられます。
道化師の象徴のような黄金仮面は
口が三日月型で、いつも笑ってるように見えるアレ。
私たちが知らず知らず刷り込まれている
紋切り型が全て詰まっていました。
そうか、全てはここが発祥の地かと
気づくと一層面白さは増します。

一気に読み、ルパンも明智も
互いに勝ちもせず負けもしない結末に
うまいなあと頷かざるを得ませんでした。
当時の東京の風物詩や土地の様子、
国際色も豊かに非常によくできた
作品でした。
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2016年12月30日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿5 魔術師」(集英社文庫)

これはよく練られた作品。
のちの怪人20面相の元になるような
要素てんこ盛りの活劇推理小説でした。
横溝作品もかくや、という犯人の呪い。
父親を生き地獄に晒された男の
一生をかけたドロドロの復讐譚。
しかも娘さえ取り替えての用意周到さに
これだけ人は復讐に燃えられるものかと
薄ら寒ささえ覚えます。
加えて殺人の様の多様さ。
ショウでの実演バラバラ殺人、
時計塔でのポオばりの時計針での未遂、
ピストル、舌を噛む、
人間心理につけこむ脅迫状、
日に日に恐怖を増すやり方、等々。
加えて、明智小五郎の恋物語。
二股ですぜ、色男。
犯人の住まいが船っつーのもなかなかな手法。
さらに、解決したかに見せて
まだまだ呪いは続くというくどさ。
いわゆるどんでん返しもあり
活劇推理小説の白眉でしょう。

乱歩が、歴史に残る作家だと実感。
前作のような駄作もありますが、
量産作家にはありがちなことでしょう。
年末、年始、ぼんやり楽しむにはうってつけです。
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2016年12月27日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿5 猟奇の果」(集英社文庫)

変態乱歩ここにあり。
ストーリー的には大きく破綻。
品川さんに瓜二つの怪人。
猟奇好きの青木さん。
初めは淫売宿でのサドマゾごっこメインだったのに
後半、明智小五郎さん出てきたあたりから
もう完全に別の小説。
共産党非合法活動に恐れる乱歩は
でっちあげとも言えるストーリー展開にシフト。
工場主やら警視総監やら総理大臣やらの瓜二つ続出。
挙句の果てに、人間完全整形術を行う
気が違った医師登場。
最後にその人、頭打って本当の発狂者になるって
ちょっとすごすぎます。
明智さんもやられたはずなのに
なぜかちゃっかり復帰して事件解決しちゃう
素晴らしき御都合主義。
登場人物の中で一番の猟奇好きは青木さんですが、
いつの間にか主人公がすり替わって
今まで幽霊男とか呼ばれていた犯人に
青木さん自身も整形させられたらしく
存在感が急になくなっていました。

もうこの作品は、アレですね、
センセーショナルに扇情的に書きあらわしたもので、
当時の東京の各地の面白さを楽しむにしくはないです。
内容求めちゃいけないです。
主題よりデティール楽しむ小説でした。
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2016年12月23日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿3 蜘蛛男」(集英社文庫)

長編小説。
連載を意識しての筆の運びが顕著。
「さて、次はどうなるでしょう!」的な。

特徴的な美人を狙う博士。
犯人探しをしていた畔柳博士が実は犯人、
というのが、前段の重要事項。
それをあっさり突然登場した明智小五郎が解決。
後段は、犯人と明智の対決の構図。
ぼけぼけして逃してしまったり
ありえん警察のお間抜け捜査があったり、
ツッコミどころ満載でした。
最後に自分から死んでしまい、
ご都合主義も満載。

でも、読んじゃいます。
変態的なプロット、差別感いっぱいの文章、
エログロナンセンスで読ませます。
人の「いかんなあ」という部分にヒットしてきます。
人の心にひそむ妖しい思いに
不敵な笑みを浮かべて近づいてくる文章です。
下世話なゴシップについつい聞き耳立てる、
あの感じです。文春➖センテンススプリング、的な。
好きじゃない。けど、気になる。
嫌いとは言えない。
そんな世界観。
まだまだ続きます。

ところで、犯人は、ちっとも蜘蛛男じゃないんです。
ただの看板題名。
まさに文春の新聞広告の見出しレベル。
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2016年12月11日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿2」(集英社文庫)

本書は、中編2編収録。
「一寸法師」
「何者」〔朝井リョウのとは違う〕
まず「一寸法師」は今なら発禁もの。
つかってはいけない言葉のオンパレード。
小人症であろう犯人への差別感満載。
極悪人として生きざるを得ない状況説明は
もちろん描かれているけど、根本的に差別。
不具者としての仕方なさ以上に
人としてダメっていう猛烈な差別。
1925年ごろだから大正の頽廃や軍事色これからの
時代背景で、猟奇を好む人々も多かったんでしょう。
推理ものとしての面白さより
そっちの妖しさで読ませるお話でした。

「何者」の方は有名にならないだけで
私も解説者も絶賛に値するお話でした。
本格推理ものです。
当時の世相が、こうした真面目な推理ものを
要求していなかったとしか思えない。
クオリティは高い。
被害者が犯人探しの探偵役、
犯人が分かった後のどんでん返し、
明智小五郎不在かと思いきや
思いがけない人間に変装、
足跡トリックの妙、
何者とは、犯人・語り手・明智、全てを指す。
凝ってました。
しかも動機の一つが徴兵逃れって、
時代背景だと思います。
その辺り全て緻密に計算されていて
なかなかの小説でした。
しかし、結局乱歩はこの道でなく
猟奇方面〔本人いわく、自分の体臭のする〕の
作品で有名になっていくようです。
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2016年12月06日

江戸川乱歩「明智小五郎事件簿1」(集英社文庫)

1ですから、今後続きます。
江戸川乱歩は小学校時代ポプラ社か
シリーズでいくつか読んだくらいで
実は詳しくない。以前小林信彦さんの本で
大した人だと知り、これは読まねば、と
思っていた矢先、文庫コーナーで
このシリーズがあるのを知りました。
今の所5巻まで購入済みです。
ウキウキ。

明智小五郎の作品の書かれた順ですから
時代の変遷もわかりやすい良い企画です。
1 D坂の殺人事件
サドマゾの引き起こした痴情事件が殺人事件と
見誤る話で、意表をつくもの。
2 幽霊
後ろ暗い男が恨まれていて
その恨み主が死んだにもかかわらず幽霊として
現れてノイローゼに陥りかけているのを
それは実は本人生きていると見抜く。
3 黒手組
黒手組と言われる悪党にお嬢さんが誘拐された と
金持ちの悩みに、実は狂言でお嬢さんは
駆け落ちしていたというオチ。
4 心理試験
ドストエフスキーの「罪と罰」に似た作り。
金のため老婆を殺した賢い男。
心理を知り尽くして行動したようだったのを
明智はさらに上をいく心理試験で見抜く。
5 屋根裏の散歩者
全てに興味の持てない男が犯罪には興味をもち
屋根裏を毎夜彷徨ううちにモルヒネをいびき男の
開いた口に投下する殺人を実行。
目覚まし時計です自殺ではなく他殺と見抜き
〔死ぬ人間が目覚まし時計をセットするわけがない〕
追い込むあたり、サクッとしているくせに
凄まじい。

面白い。
読みます。
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2016年12月02日

柳家小三治「柳家小三治の落語5」(小学館文庫)

小三治師匠の声が聞こえてきそうな本でした。
収録は
付き馬
鼠穴
青菜
出来心
馬の田楽
あくび指南
味噌蔵
でしたが、このうち青菜、出来心、馬の田楽は
幸い聴いたことがあるので、ああ、まんまだと
嬉しくなりました。
マクラからの噺へのもっていきかたや
デティールに出る登場人物の表現力が
至芸の証左だと思います。

ああ、また聴きに行きたいです。
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2016年11月30日

広瀬稼和生「僕らの落語」〔淡交社〕

初めて聞いた会社からの新書。
1300円しましたけど、いい本でした。
現代を代表する落語家の対談集。
広瀬さんがコーディネートして時々口を挟み
いい感じでまとめてあります。

最初に活動家米團治と柳家花緑
遺伝子的すでに名人落語家一家。
非常真面目な対談。
米朝師匠曰く、落語とは
おじいちゃんが孫に聴かせるおとぎ話、であれと。
至言ですね。
感謝を持たない若者にどのように対応すべきか
悩む花緑は弟子との距離感に悩んでいるわけで、
血の中に落語があるものとそうでないものとの
せめぎあいとも読めました。
さすが米團治さんはさらに一回り年上なだけに
諭すような場面も。
ちなみに米團治さんはほぼ私と同世代。

二つ目は、今をときめく天才肌の
春風亭一之輔と桃月庵白酒。
全部を覚えきらずともじぶん流に料理して
爆笑させる落語に変換してしまう。
おそらくは実はかなり聴き込んだり学んだりしている
と、踏んでいます。
けれどそれを感じさせるのは野暮だとも知っている
江戸前な二人です。
彼らはこれからの落語界の風雲児であり牽引者だと
何度か聞いた私はそう思います。

三つ目は、ユニークな存在の
春風亭百栄と三遊亭兼好。
百栄さんは新作派で兼好さんは古典。
一人者、ではありませんが
それぞれアメリカ遊学後、サラリーマン生活後に
落語界の仲間入りをした異色の経歴持主。
世間を知った上での落語は、味があるもの。
私は兼好さんのあの子元気が出る声が好き。
いわゆる正統落語ではないのかもしれないですが、
私はこれからも追いかけたい落語家さんです。

最後は女性落語家さんの柳家こみちと三遊亭粋歌。
こみちさんは小三治さんの会で伺った。
粋歌さんは新作が多いようですね。
まだ聴いたことありません。是非次回何かの折に。
お二人とも40代っぽいです。
女だからという苦労もあるようです。

まだまだ知らない方も多いです。
こうした良心的な本がこれからも出てほしいです。
落語家さんの会で感情をもっと知りたい。
ネット検索しても情報の少ない方が多いです。
若者に興味を持ってもらうためにも
もう少し情報公開は必要です。
広瀬さん、同世代人間として応援しています。


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2016年11月27日

湯浅学「ボブ・ディラン」(岩波新書)

ノーベル文学賞を取ったから
にわかに読むことにしました。
ミーハー。
「風に吹かれて」「like a rolling stone」くらいしか
知りませんです。
好きなアーティストが彼から影響受けている事は
知ってます。
今からどの楽曲やアルバムを聴けばいいのか
知りたかった。
でも結局どれもいいらしく
今はより困惑して迷っています。

ていうか、英語じゃないですか。
やっぱり彼が言いたい事は
わからないだろうって考えちゃうんですよ。
ここが一番入りづらいところです。
若い頃なら歌詞カード見て辞書と首っ引きで
調べておお〜ってなるんでしょうが、
今はその気力に欠けています。
それで敷居を高くなっているのは事実です。

リトル・リチャードやバディ・ホリー、
やがてウディ・ガスリーに強く影響受けて、
ニューヨークに来てフォークシンガーとしての
地位を確立。
本人には社会派とか活動家の意識は皆無にもかかわらず、
周囲がそれを期待する事への重圧。
ビートルズとの交流。
「like a rolling stone」は当時のラジオでは長すぎる曲で
A面B面に分けて録音され流したところ
きちんと全部流せとリスナーの要望が出たこと。
嗄れ声で歌う彼が、豊かな声量で歌ったり
表現豊かなシンガーとなっていく過程。
1978年2月に初来日コンサート。
ユダヤ教からボーンアゲイン派教徒になり
信仰を元にしたアルバムも作った事。
トラベラーとしてツアーし続け
家庭を顧みず生きていた頃。

読み終えて思ったのは、
やはりプロテストシンガーではない、
言葉と音に魂を捧げたアーティストなんだと
いうことです。
その意味で、文学賞は妥当だと思います。
英語圏で生きていない私には
理解しきれないことも多いと
思いますが、やはり湯浅さんオススメの
97年制作「タイムアウトオブマインド」辺りから
聴きたいと思います。
「フリーホイーリン」「時代は変わる」もいいらしいですね。
目安がたったんであとは購入ですなぁ。

昨日学校の周年でした。
いろいろ疲れました。
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2016年11月19日

万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」(文春文庫)

いやいや、まさかこうなるとは。
ラスト100ページあたりからの
大阪城炎上から大団円まで
まさか泣かされる系になるとは。
万城目さんはどちらかというと
笑えるタイプの作風と信じていたし、
このタイトルからの印象ではハッピーエンド予測
してました。軽率でした。

風太郎はプータローでありながらも
真面目一辺倒で闘い抜きました。
ひさご様は予想通り秀頼公でした。
その最期に立ち合うよう高台院様が風太郎を選んだ。
その運命を呼んだのは、ひょうたんの神?の
因心居士。見事、果心居士と出会い
彼らは行くべきところへ行きます。
しかし、彼らは人の生き死にには関われない。
残菊との闘いには勝ったものの
その時にはすでに黒弓も蝉も常世も……。
風太郎が預かった秀頼公の子供は
もっとも彼を裏切ってきたと思っていた
百市に託した。そこの手伝いは居士達の力。
しかし、生き死にには関われないからこそ
風太郎は生き絶えることになるのでした。
壮絶すぎて言葉も失う描写の連続です。
戦国の世とは、実にこの様に凄惨であったと。

大真面目な戦国末期の忍びたちの
居場所のない景色でした。
でも生きてきた。
風太郎はしっかり全ての約束を果たしてきました。
ただ一つ、この争いが終わったら
芥下と共にひょうたん屋をやるという
約束だけは果たせなかった。
切な過ぎました。

読ませられました。
読み終わり、しばし茫然でした。
こりゃないぜ、万城目!と思いました。
幸せを与えて欲しかった。
辛かった。
でも、多分作者は戦乱の世の非常をも
私たちに伝えたかったんだと思いました。
久々にずっしりと重みを感じた本でした。

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2016年11月13日

万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」(文春文庫)

今日は教えた子でNHK児童合唱団に入っている
お子さんの発表会をオペラシティで見てきました。
オペラシティ!初めてです。
初台という駅で降りたのも京王新線にも
初めてです。なんでも行ってみるもんです。
小学二年生から18歳くらいまでの
その教え子以外は知らない子ばかりですが、
聴き終わって涙ぐむ自分がいました。
盛大な音楽会、と言ったところでしょうか。

昨日今日の遠出?で読み切った上巻。
風太郎はプータローと読みます。
つまりは優秀な忍者なんですが柘植屋敷から
追い出され何もすることがなく京都で
ひょうたん作りを始めるニートであります。
ひょうたんは豊臣秀吉のトレードマーク。
なんだかんだ珍重されていて
ひさご様と言われる引きこもり青年のお世話もしたり、
忍者仲間の常世繋がりでねね様=高台院様とも
繋がりができたところで、徳川氏と豊臣氏のいくさになった。

全ての行動は実は忍びの者たちによって規定され
そのレールを走っている感じのある風太郎。

友人?のような腐れ縁のマカオ帰りの黒弓。
女の格好をして高台院に仕えている常世。
同期で好きにはなれない蝉。
ひょうたん作りを指導してくれる芥下。
所司代に仕えているらしいかぶき者の残菊。
高貴な方病弱な方と言われながら蹴鞠の上手いひさご。
そしてひょうたんの精?のような時々現れる因心居士。
相方に果心居士というのもいるらしく、
互いに会うためには風太郎のチカラが必要らしい。
一つ一つのエピソードは分かりやすいのですが、
だから、どんな繋がりなのかと。
さっぱり分かりませんです。
でも面白い。
例の家と康が離れた鐘の話も出てきて
歴史のあの頃かと徐々に楽しさが深まってきています。

下巻で謎も解けるとワクワクです。
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2016年11月08日

伊坂幸太郎「死神の浮力」(文春文庫)

正直「死神の精度」は読んだものの
内容はすっかり忘れています。
構成で読ませた以前の作品より
私は今の作風の方が好きです。
会話の面白さは色褪せてないし
展開もよりオーソドックスになって
誰にも読みやすい作品でした。
伊坂さんは、自分ではいつも
自分は臆病な人間だと吐露される。
その癖小説の方は殺人だの死の課題だのに
果敢にアタックされる。
面白い小説家だし、小説家らしいと言えます。

山野辺という小説家とその妻が主人公で
死神の千葉は彼らの死に立ち合うためにやってくる。
山野辺は娘の菜摘を本城なるサイコパスに
殺されています。
その本城に復讐を果たすことが
生きるアイデンティティになっています。
しかし、本城に着く香川という死神は
本城は死なないと決めている。
読み手としては、苛だたしい展開。
さまざまなハードボイルドな展開が続き
その都度千葉が結果的に山野辺夫妻を
救うという不思議に状態になる。
実は死神にも意志があるのでは、と
思わせられます。
最後に本城はどうなるか、これが
実に旨がすく結末。
さすが伊坂さん、と思います。
このためにイジワルな伏線 張っていたんだ、と。

題名の浮力、って
人生上の浮き、も含まれていると感じました。
死神さえも。
ラストシーンもいいです.。
相変わらずとても映画的でした。
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2016年10月30日

町田康「バイ貝」(双葉文庫)

バイ貝=売買か。
読んでわかった。
もっとあやしい小説か思った。
ちょっと期待ハズレ。
自分のウチに溜まる鬱を散ずるため
鎌を買い、草刈りに失敗。
さらに中華鍋を買い、使いこなせずへこたれ。
シュミならと
カメラを買い写し悦に入ると
メカに砂が入って修理にまた金がかかる。
そういう話です。
町田さんの文体で読めましたけど
内容は、うふふ、です。

購買するという行為に
意味を感じてことがなかっただけに
そこは新鮮でした。
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2016年10月27日

三浦しをん「格闘するモノに○」(新潮文庫)

就活に負け、家族のゴタゴタにウンザリしつつ、
おおくない友人は男好きとホモ。
付き合う男が70歳過ぎの脚フェチの書家。
お父さんは政治家。
義母、ということは、彼女の母は死亡。
弟は高校2年で賢いが喫煙者で姉を小馬鹿にしつつ
お互い大事にしている。
ちなみにお父さんは義母の子。

主人公の可南子は
しをんさんそのものだと思う。
でも決して私小説然とはしていない。
おちゃらけた部分もそこはかとなく上品。
ここがしをんさんの面目躍如。
学生文学でありながら大人も十分楽しめます。
デビュー作、というから驚き。

今の若手で
読み継ぎたい一人です。
小ねこに勧めました。
まさに今の彼女がこの状況なので。
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2016年10月24日

朱雀新吾「異世界落語@」(ヒーロー文庫)

ヒーロー文庫なんていう文庫あるんですね。
喬太郎絶賛、の惹句で読みました。
要するに、異世界に間違って召喚された
楽々亭一福なる落語家が異世界に合わせた落語を
展開して異世界の諍いをとどめる話です。
その世界観には興味がないです。
RPGは大好きなゲームですが、
それを小説の中でリアルに描かれても
子供だましの域は抜けません。
ただ、その一福なる人物がひょうひょうとしして
語る様子は好ましかったです。

時そば転じてクロノ・チンチローネ。
青菜転じてニグニグ草。
子ほめ転じてソードほめ。
元犬転じて元竜及び元スライム。
最後は新作(動物園を換骨奪胎して)エルフの宴。
落語好きには、ははーんとなる展開ではありました。
新しい試みではあるし、若者がこれを読んで
落語好きになってくれたら嬉しいです。
以上です。
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2016年10月19日

愛川晶「神田紅梅亭寄席物帳 三題噺示現流幽霊」(創元推理文庫)

今回は文庫化最終巻のようですが、
よかったです。
知り合いの落語玄人の指南者にお貸ししました。
どんな感想がいただけるか楽しみです。
出てきた落語を記します。

「多賀谷」では
一目上がり(新春ネタ)トントンオチ。
火焔太鼓
初天神、逆さオチ、というそうです。
鰍沢
そして、たがや。
この噺は首が飛ぶ噺なので
それを福の助は改良して川に落ちるカタチに。
そこには多賀谷さんの謎が関係しています。

「三題噺 示現流幽霊」では
風呂敷
金明竹
蛸坊主
へっつい幽霊
牛ほめ
転宅
上野のお山、カゲマの幽霊、示現流の三題噺が
表題作で、この話の主人公の文吉師匠が
認知症になる前にいただいたお題ということ。
しかし文吉師匠はサゲまで行けなかった。
それを甥っ子の悪事を暴く技として
福の助はサゲまで続けて考え演じる。

「鍋屋敷の怪」は馬春師匠の復帰公演を
控えての馬春師匠福の助、亮子さんの
温泉旅。そこで起きる怪、しかし実は
馬春師匠の画策ありで最後の最後まで
ええええ〜?な感じの展開です。
最終的にこのラストで福の助は晴れて真打!
だよね〜。福の助、博覧強記過ぎるし。
出てきた落語は、
番町鍋屋敷
宿屋の仇討ち
黄金餅
子ほめ
馬の田楽
そして、馬春師匠語る「海の幸」
これはこの話ではなく
次のオマケ話の特別編「過去」に収録。
本来「テレスコ」という題らしいが
題に楽屋オチが見え隠れするので
海の幸と改題したらしい。
林家正蔵師匠が。

ウンチクたっぷり。
次第に福の助の高座見たくなります。
ちなみに解説には喬太郎師匠。
読み応えありました。
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2016年10月12日

愛川晶「神田紅梅亭 うまや怪談」(創元推理文庫)

福の助と亮子夫妻の物語その3。
馬春師匠と奥さんも相変わらず素敵。
馬春師匠は不倫していた話も入り、
なかなか面白かったです。
ただし、相変わらず、推理云々より落語の改変が
より面白かった。
推理の流れは面白いのですが、
解決が独りよがりになって読者はああ、と
なるにとどまります。

さまざまな落語が出てきますが
今回は
甲府ぃ、竹の水仙、ねずみ、平林、
豊志賀、猫怪談、夜店風景、厩火事。
厩火事を怪談仕立てにしてサゲを
ーはて、おそろしきイッ、シューネンじゃなあ
って、唸ります。この噺、聴きたい!
掛け取り、宮戸川、たばこの火、など。
聞いた噺から全く知らない噺まで
ウンチクのオンパレードで、そこに惹かれます。

もう一冊あります。続きて読みます。
自作後書きで知ったのは
作者のごひいきは柳家小せん師匠だそうで。
亡くなった方では林家正蔵師匠だそうです。
小せん師匠林家解説にも登場していて
作者の噺改変を活かし高座にかけていらっしゃるそうです。
「夜鷹の野ざらし」、先回の本に載っていました。
聴いてみたいです。
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2016年10月06日

愛川晶「神田紅梅亭寄席物帳 芝浜謎噺」(創元推理文庫)

落語の噺を題材にした推理小説第2弾。
その辺の本屋にはないので
わざわざ取り寄せました。

亮子さんの旦那は落語家寿笑亭福の助。
師匠は春風亭柳朝をモデルにした馬春。
切れ者の名人だが、今は倒れて体が不自由で
房総でリハビリ生活という設定。

紅梅亭で起きる事件そのものより
落語噺の見直しのくだりが面白いですね。
作者は本当に落語が好きだし、噺の矛盾点を
いちいち指摘できるくらい聴き込んでいることが
伝わってくるのです。
一つ目は野ざらし。
骸骨釣る馬鹿らしさは、実は音曲噺だったから、
なんて私ごときにわかるはずもない。
二つ目は芝浜。
人情噺とは言え、なぜここまで人気があるのかとか、
革の財布を釣るにあたり主人公の棒手振りが
煙草好きなことと繋げてのオチは見事でした。
三つ目は、試酒。
酔っ払いを演じるならリハビリ中の人でも可能、
確かに。

ただ、惜しむらくは、
推理の展開が予測不能なところがあったり
亮子のは気付けても、読み手には?な部分が。
狙うところは面白いのにいつも解決編で
うーむとなります。
それを補って余りある噺の料理で
読み進みます。
もう2冊同じ作者の料理本があるので、
噺の解説や改良の部分を
楽しませていただきます。

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2016年09月30日

吉田修一「怒り 下」(中公文庫)

洋平が間違いに気づき、
愛子が号泣する場面で
ユーミンの「優しさに包まれたら」が
ウオークマンから流れるって反則を
課せられ、思わず朝の通勤電車で
泣きそうになったのは私です。

映画との相違が下巻半ばくらいから
出てきました。
辰哉が田中を殺してしまう場面は
自分の家にの民宿の中でした。
田中も牙をむかずまだ本性を出して
いない段階で、あくまでも辰哉自身の
泉を守ろうとする気持ちと、
信じるものに裏切られた気持ちそのものの
真っ只中での殺人でした。
泉もその母も沖縄から去ることで
気持ちに決着をつけるのです。

他にも、刑事たちの人生や
犯人殺害での事件収束に対する無念さは
映画では割愛されています。
一方、優馬のエピソードや
洋平一家のエピソードは、ほぼ同じ。
むしろ映画より早くから彼らの関係した
男の人たちが犯人ではないことに
気づかせてくれる展開です。

どちらがいいとかいうのではなく、
映画が原作に忠実で、さらに映像の力で
見る側の想像力を掻き立てるつくりだった
ことに改めて驚きます。
余分な説明を排除し、必要なエピソードに
特化して迫るものを迫らせました。
原作は、逆に説明をぎゅっとしぼって
読み手に想像のキャパを広げさせてくれ、
人ってこんなにも弱く信じ切れないものだと
突き付ける一方で、
人ってこんなにも熱い思いで相手を守ろうとし
こんなにも傷付けてしまうものだと
愛おしさを募らせてくれるのでした。

途中途中、本当に泣きそうになって、
困りました。
原作と映画の相乗効果です。

出逢えて良かった作品です。
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2016年09月27日

吉田修一「怒り 上」(中公文庫)

サクサク読める理由は、映画のおかげ。
映画のシーンがいちいち浮かぶ。
こうなると、いかに映画が素晴らしかったか
分かる。
もちろんこの原作の良さも、来ます。

映画は無駄な説明は省き
イメージとこちらの想像で次を知る。
あるいは、次のシーンを見て前の出来事を
補う。
小説は、一つ一つのエピソードに
最低限ながら説明があり
映画では謎に残る所も納得に導いてくれる。

両方触れて、私は正式な「怒り」ファンです。
原作読み、改めて映画が凄かったと思っています。

上巻は、
田代と愛子が同居決意するまで、
優馬の母が死に、直人を少し疑い始めるまで、
泉が犯され、辰哉の家の民宿に田中が働き始めるまで。

下巻、映画との相違、共通点見つけながら
楽しみに読ませてもらいます。
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